背景
経済産業省から、DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~が発表されて早くも5年が経ちました。
出典:経済産業省(DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf
ここ数年で、DXに取り組むためにDX推進組織を立ち上げて取り組みをスタートした企業は多くあると思いますが、その中で上手くDXを進められている企業はどれくらいあるでしょうか?
我々の方にも、DXを推進する人材がいない、DXの進め方が分からない、既存のプロセスに縛られて上手く進められないなど色々な課題が聞こえてきます。
その中で今回は、私が相対したお客様もDX推進について悩まれていましたので、そこでの経験を踏まえて取り組むべきポイントを述べたいと思います。

課題
企業毎に、DX推進組織を情報システム部門側に設置したり、業務部門側に設置したり、専門組織として切り出して設置したりと色々な形があると思います。
その中で、私は情報システム部門にあるDX推進組織の方々と取り組みを進めていました。
DXという言葉が世の中に広がり始めた頃は、データ活用やAI活用などそれまで企業があまり取り組んでなかった領域を中心に、体制や環境を整備し、業務部門とも随時PoCを進め、成果を創出するという取り組みを行っていました。
そこから数年経ってくると当時の勢いと比べて停滞気味になり、新しいことに取り組むとなってもなかなか思うような形で進まないことが出てきました。
担当者の方達からは、「次は何に取り組むのが良い?」「何か最近のトレンド技術はない?」といった取り組むテーマのネタ切れの声や、「他部署に依存せず自分達で取り組めるものは無いか?」「他部署が取り組んでないものは無いか?」といった他部署と線引きをするような声が出てくるようになりました。
このような声を聞いたことがある方はいらっしゃるのではないでしょうか。
突き詰めていくと色々な課題がありますが、ここでは、2点挙げたいと思います。
1. “やるべきこと”=“ビジネス課題”にフォーカスできていない
技術のキーワードから面白そうなものであったり、社内で(実態は把握できていないが)課題がありそうなものであったりを選ぶ傾向があり、検討は進めてみるものの最後はビジネス課題に繋がらないため、検討段階で終わってしまうという状況を生み出していました。
2.業務部門と連携して進めることができていない
1つ目と関連しますが、情報システム部門で検討を進めていき、ある程度進んだ段階で、業務部門などの関係部署と会話をした際に、情報システム部門が想定していたことと違った業務部門の活動や考えを知ることになり、プロジェクトが途中で終わったり、その後のプロジェクトの方向性を変えざるを得なくなったりしたことがありました。
一言でお伝えすると、業務部門と連携ができていないことから、課題を適切に把握できず、情報システム部門でできることに取り組むというDXとはかけ離れたような状況になっていたということです。

解決策
上記で挙げた2つの課題に対して、それぞれの解決策の例を示します。
1. “ビジネス課題”に技術を繋げる
技術から入るだけで終わらせず、課題にフォーカスし、課題と技術を繋げて最後はビジネスに活かすという視点が必要になります。
特にDXを進めるには、自組織だけではできないため、他組織にどのような課題があるかを把握していくアプローチが求められます。
しかし、情報システム部門としては「課題を教えて欲しい。」と手ぶらで他組織のところに行くのは憚られる思いになることがあると思います。
実際に私が担当した案件では、各組織の中期経営計画や事業計画の情報から、課題仮説とソリューション案を検討し、それを基にヒアリングしにいく取り組みを行いました。
それにより、我々が色々と検討したことが他組織側には伝わり、こちらが聞きたいことを詳細に教えてくれる姿勢になってくれて、その後の連携が上手くいくということがありました。
2.業務部門と連携して計画化
情報システム部門で取り組み内容を決める場合も、早いタイミングで業務部門などのステークホルダーと会話し、一緒にプロジェクトを進める方向に持っていく必要があります。
各期が始まってから、または始まる直前にテーマを決めて業務部門に会話をしに行くと、業務部門側は既にその期の計画を立てた後になるため、対応できないことが多いです。
対応できたとしても他に優先順位が高い業務があるため後回しにされ、なかなかプロジェクトが進まないという事態になります。
そのような状況にならないように前々から次の期のテーマ・計画を考え、業務部門を巻き込む行動が求められます。
実際に私が担当した案件では、遅くても次の期の2、3カ月前から次の期のテーマを摺り合わせ、計画化していく動きを取るように心掛けています。
また、プロジェクトの方向性や進捗に影響するステークホルダーがいる場合は、計画化の早い段階で、会話をして目線を合わせるように促しています。
熱意を伝え、ステークホルダー側の優先順位を上げてもらえるよう働きかけることも必要になります。

まとめ
今回は、2つのポイントを述べさせていただきました。
DXを推進してビジネス成果を出すためには、単独の組織だけで検討していても難しいところがあります。
情報システム部門、業務部門と線引きせず、お互いが垣根を越えて連携し、同じ方向に向かって歩んでいく取り組みが必要になります。
現在、DXに取り組まれている方は、上記以外にも様々な課題に向かって日々取り組まれていることと思います。
皆様の解決の一助としてこの記事が参考になると幸いです。
