「データドリブン経営」は重要なテーマ

近年、「データに基づく経営」を意味する、データドリブン経営が注目を集めています。
その背景には消費者個人の価値観の多様化や企業を取り巻く環境のニーズの変化が挙げられます。
ビジネス競争が激化し、複雑化する今、求められるのは「既存ビジネスの生産性向上」と「新規ビジネスの創出」です。
これら2点を効率的に実現するためには、勘や経験を判断材料にするのではなく、「データ」という根拠に基づいた戦略立案や方針決定が必要です。

一方、データは意味を理解し、データ同士の関係性を見出す事で初めて価値が生まれます。
データドリブン経営を目指して多くの企業がデータの蓄積を始めましたが、蓄積されたデータをどう収集し分析できるかがビジネスの将来を左右する今後の重要なテーマになっています。

なぜDWHではないのか

「DWH(データウェアハウス)で十分じゃないか」データ活用をしようと考えると、このような声が聞こえてきそうです。
確かにデータ統合基盤の歴史はDWHから始まり、今日までデータを収集し、整理する基盤として広く使われています。

一方で高いコストをかけて構築したDWHやデータレイク等、従来のデータ統合基盤がデータの箱としてしか機能しておらず、十分に活用できていないという課題も耳にします。
なぜ従来のデータ統合基盤は十分にその役割を果たせていないのでしょうか。
ユーザーから挙げられる課題は主に3つあります。(図1)

  • ① 事前に決められたデータのみを扱うため、欲しいデータが含まれていないことがある
  • ② 何層にもわたるETL処理により、新しいデータの提供までに時間がかかる
  • ③ 全社的な管理・ガバナンスの適用が難しい
図1 複製・蓄積を繰り返す従来のDWHとETLによるデータ統合
図1 複製・蓄積を繰り返す従来のDWHとETLによるデータ統合

ビジネスニーズの変化が加速する中、ビジネスで勝ち残るためにそのニーズにいち早く応えていくことが必須である現代においては、従来のデータを蓄積するデータ統合基盤のみでは業務ユーザー、管理・運用ユーザー双方の要望を満たすことが難しくなりつつあります。
業務ユーザーは「必要な時に、必要な情報をリアルタイムに取得できること」を求めています。
また、管理・運用ユーザーは「セキュリティや権限を容易に管理でき、データを迅速に提供できること」を求めています。
それぞれのニーズに有効性があり、同時に従来のデータ統合手法の課題を解決し得る技術が「データ仮想化」です。

なぜデータ仮想化?

従来のデータ統合基盤は、ETLツールやバッチ処理でデータのコピーを繰り返し、データソースからデータレイク、DWH、データマートを作成するというバケツリレーを行うことが常でした。
今読んでいるあなたも、グループ会社間や企業内の複数部署にまたがったデータの分析を行うために、形式の異なる大量データを整形・統合し、その度に膨大なデータの複製・蓄積が行う必要があり、データ提供までに時間を要していないでしょうか?

一方、データ仮想化は、異なるシステムまたはデータソースにまたがる全てのエンタープライズデータを1つの仮想データレイヤに統合し、ユーザーが求めるタイミングで迅速に最新のデータを提供する技術です。
物理的なデータの複製なく、最新のデータの整理や統合が可能なため、スピーディにデータに基づいた経営戦略を策定し活用することを可能にします。(図2)

図2 データ仮想化を用いたデータ統合
図2 データ仮想化を用いたデータ統合

データ仮想化の特徴をまとめると以下のような点が挙げられます。

  • ① データを必要な時に必要な形でリアルタイムに提供:
    物理的なデータのコピーを重ねることなく、最新データの提供を可能にします。
  • ② ガバナンスやセキュリティの一元管理が可能:
    全てのデータソースがデータ仮想化レイヤーという単一のアクセスポイントで管理できるため、データの適正利用とデータアクセスの利便性を両立します。
  • ③ 開発コスト削減:
    データを複製する必要がないので初期開発はもちろん、変更時における開発も最小で済むため低コストでデータ活用を開始・維持できます。
  • ④ ユーザー主導のデータ活用を実現:
    データのコピーが不要なため、従来のデータ統合基盤で行っていた設計・開発なく、ユーザー主導でデータ活用を始められます。

データ仮想化は、これら4つの特徴を生かして鮮度の高いデータを必要なタイミングで迅速かつセキュアに利用することを可能にし、従来のデータ統合基盤の課題を補います。
同時に変化が激しい現在のビジネス環境において、経営やマーケティングの意思決定の指針となる効果的なデータを迅速に提供することを可能にし、データドリブン経営の加速に貢献します。

データ仮想化による活用事例 (構築期間4カ月)

データ仮想化の特徴を押さえたところで、実際にデータ仮想化を取り入れてデータ活用を促進させることができた事例を見てみましょう。

株式会社博報堂テクノロジーズ様(以下、博報堂テクノロジーズ)では、グループ各社の経営情報や、マーケティングデータ等、様々な種類の膨大なデータを有しています。
しかし、データは各システムでサイロ化されているという課題感を持っていました。
データの利用要望が発生すると、都度​データ連携開発が必要になったり、各システムで実施しているアクセス制御を考慮した複雑な設計が必要になったりと、スピーディなデータ利活用ができないという課題に直面していたのです。

このような課題は、どの企業も抱える課題ではないでしょうか。
データ仮想化はこのような課題解決に非常に役立ちます。
博報堂テクノロジーズではデータ仮想化製品のDenodo Technologiesの「Denodo Platform」を用いて課題解決に取り組みました。

Denodo Platformを用いたデータ仮想化を行うことで、分散するデータソースの統合​、および各データへのアクセス制御の一元管理を実現しました。
これにより、データ利活用に伴う連携処理の開発が不要となり、データ提供の迅速化や、アクセス制御の一元管理を実施することで、データガバナンスの強化を実現しました。

なお、データ仮想化の導入にあたっては、まずは必要最小限のデータで迅速にデータドリブン経営を立ち上げることを目指し、AWS基盤開発からDenodo Platform環境および仮想データベース、ビューの設計・構築・試験までを4カ月で実施しました。
構築後は、データの拡張や利用者の拡張に対してもローコードで対応することができ、急速なビジネス環境の変化にも追従したシステムの拡張が可能となっています。(図3)

図3 Denodo Platformを用いたデータ仮想化分析基盤
図3 Denodo Platformを用いたデータ仮想化分析基盤

最後に

データ活用はDWHやデータレイク等、様々な手段のもとに進化を遂げてきました。
ビジネスにおけるデータ活用の重要度が高まり、コストと迅速性が求められるようになる一方で、データは増大していきます。

データ仮想化は従来のデータ統合基盤のメリットは生かしつつ、柔軟かつ迅速に低コストでデータ活用を促進し、データドリブン経営実現に貢献する技術です。
新たな可能性を見いだし得るポテンシャルを秘めているといえるでしょう。

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