はじめに
DX、つまりデジタル変革は、単にデジタル技術の導入を意味するだけではないことはご存知でしょうか。
実際の成功への道は、組織や文化、人材、プロセスなど、あらゆる面での変革を必要とします。
昨今では、DXの推進にあたり、経営資源の配分について経営トップと対等に対話し、デジタルを戦略的に活用する提案や施策をリードする役割として、CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)が注目されており、現在ではCDOやDX推進組織を設置し、DXに取り組む企業がおよそ半数に達しています。
(※出典:CDO Japan Club「CDO Club Japan DX実態調査レポート」2023年3月)
DXの推進には、CDOとDX推進組織が協力し、効率的に成果を出すことが必要ですが、実際には連携がうまくいっていないケースが多いように思われます。
図1:CDOとDX推進組織

DX推進組織は、その出自により複数のパターンに分けられますが、今回は、筆者の経験を基に、情報システム部門を出自とするDX推進組織でよくある課題のケースと、DX推進組織が置くべき3つのロールという観点で、解決策を紹介します。
本記事が皆様のDX推進のヒントとなれば幸いです。
企業のDXの成功には、CDOの推進力と強烈なリーダーシップが重要ですが、それと同じようにDX推進組織のフォロワーシップも必要不可欠です。
しかし、CDOとDX推進組織の関係性や、組織構造の面で抱える問題が、DX推進を阻害する要因となることが多くなっています。
筆者や、我々デジタルテクノロジーディレクター®が支援するお客様で、よくある課題のケースを3つご紹介します。
課題①:CDOとDX推進組織に物理的・精神的に距離がある
CDOとDX推進組織は、立場や役割の違いから、コミュニケーションがスムーズに行われないことがあります。
特に、CDOとの立場差により担当者が尻込みしてしまい、報告頻度が低下することで、CDOの方向性との乖離が発生し、最終盤での手戻りが発生しやすくなります。
また、中間層が多いと、報告の段取りが複雑になり、担当者の意見がCDOに届きにくくなります。
課題②:CDOのスピード感についていけない
CDOは、DX化に向けて、新しいアイデアや戦略を次々と提案しますが、DX推進組織のメンバは、通常業務と兼務になっていることがほとんどです。
日々の業務に忙殺されているため、推進スピードが低下するだけでなく、自ら考えることなく、CDOの言ったことをそのまま進めてしまいます。
また、担当者は技術者中心で、ビジネス的視点が欠けていることもあります。
課題③:縦割り組織によって情報が散在
三つ目の課題は、縦割り組織によって情報が散在していることです。
DX化に伴う社内課題は、その性質によって責任主体が様々な部署や役割に分かれていることがあります。
各部署を巻き込んだ課題の推進はスピードが低下しますし、各課題オーナーが点在しており、横串で検討できる人材がいないため、横断的な課題を見落とすことも増えます。
これらの課題を解決するためには、DX推進組織に三つのロールを意識的に配置して、CDOと組織との距離を縮めることが必要です。
CDOは、担当者の状況やニーズを把握し、担当者の意見を尊重することが大切です。
また、担当者は、CDOのビジョンや目標に共感し、主体的にDXに参加することが求められます。
CDOとDX推進組織が一体となって、DXを加速していきましょう。
図2:DX推進組織の課題と必要なロール

ロール①:CDOとの橋渡し役
まず必要なのは、CDOとのハブとしてのロールです。
CDOとDX推進組織の間には、物理的・精神的な距離があることが多いですが、円滑なDX推進には遠慮のないコミュニケーションが必要です。
CDOの考えを担当者にかみ砕いて伝え、担当者の背中を押すことで、DX推進のスピード感を高めると同時に、担当者からの情報を集約してコンスタントにCDOに報告することで、認識違いからの手戻りを少なくできます。
ここで重要なのは、“遠慮のない”コミュニケーションを取ることです。
従来の関係性によるしがらみのないメンバや、外部から要員をアサインするのもいいでしょう。
ロール②:DX推進の専任者
二つ目に重要なのは、専任者を配置するということです。
筆者の過去の経験では、他業務との兼務でアサインされているメンバは時間的余裕がなく、CDOの指示に思考停止して従う事例を多く見てきました。
主体性をもってプロジェクトに従事させるためには、DX推進の専任者としてアサインすることを推奨します。
もし、専任要員を充てる余裕がない場合は、社員代替として、外部企業からメンバを募るのも手です。
ただし、関与する人財は、外からのPMOや“アドバイザー”に留まらず、“サポーター”として、内部から推進をドライブできる人材である必要があります。
CDOの壁打ち相手になり、CDOのアイデアや戦略をDX推進組織に落とし込むことで、DXの方向性を明確にします。
ロール③:組織横断の推進者
三つ目の解決策は、組織(部門)横断でDX推進できる人材をDX推進組織に配置することです。
組織横断の課題が発生した際、各部門の担当者に解決を丸投げしたり、QAを押し付けることで反感を買い、プロジェクトに非協力的になることで、推進に支障をきたす事例を多く見てきました。
横断的な知識やスキルを持つメンバが自身に情報を集約し、自ら仮説提示・提案することで、各組織との信頼関係も構築できますし、各担当者のオーナーシップを引き出して、結果的に推進スピードの向上が期待できます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
DXは、企業の変革と成長を目指す大きな取り組みです。そのためには、CDOだけでなく、CDOに追従する担当者も重要な役割を果たします。
円滑なDXの推進には、CDOとDX推進組織の密な連携が不可欠ですが、彼らの間にはコミュニケーションやスピード感、情報共有などの課題があります。
これらの課題を解決するためには、CDOと担当者の距離を縮めるロールを配置することが必要です。
CDOと担当者が一体となってDX化を加速していきましょう。
※記載されている団体名は、各社の登録商標または商標です。
