はじめに
小売・消費財業界をはじめ、販促費が売上の数%を占めている中、販促予算を効果的に使用できていますでしょうか。
業界の様々なお客様と会話をさせていただくと、販促施策の費用対効果を正確に把握し、適切な販促施策の選定が行われているケースは極めて少ない状況のように思われます。
今回は、販促施策効果の適切な可視化・最適化を行うことの重要性や、その経営インパクトについて、ショッピングセンター(SC)業界の事例をご紹介したいと思います。
SC業界における課題
SC業界における外部環境として、EC等の他チャネル増加、人口減少、オーバストア、など今後の経営上、様々な向かい風を受けることが見込まれています。
こうした中で、今後は一層効率的な経営を進めていく必要があると考えられますが、特に販促領域(ポイント施策、イベント施策等)では、以下のような改善余地のある課題が多くの企業で見受けられております。
- ①販促施策の評価が横並びで十分にはできておらず、PDCAサイクルが効果的に回せていない。
その結果、勘と経験、もしくは前年踏襲での企画などに終始しており、費用対効果の高い販促施策に関するナレッジが蓄積されない。 - ②販促施策の評価をしている場合でも、前年同曜日との比較となっているため、天候等の外部要因を排除して評価ができておらず、効果測定の精度が低い。
そのため、本当に売上増・客数増に繋がっている施策なのか、正しい評価ができていない可能性が高い。
Tableau等のBIツールの普及もあり、①については、ある程度進んでいる企業もありますが、施策効果を評価するための基準が前年の同曜日などで、天候や外部要因を排除できておらず、本当にその施策自体の効果がどの程度あるのか、までは見切れていないケースが大半のように思われます。
解決事例とその効果
これらの課題を踏まえ、あるSCのお客様と対象の1施設において、各販促施策の費用対効果を横並びで算出するPoCを実施しました。更に、販促施策のROIを踏まえた最適な年間販促リストを作成し、売上増・販促費用削減効果を試算しました。
その際、NTTデータで開発した「販促未実施だった場合の売上・来客数を予測するモデル」を用い、天候などの外部要因を除外した販促施策の純粋な効果を見極められるようにしました。
具体的には、以下のプロセスで検証を行っています。

その結果、以下の通り、対象施設におけるポイント系施策・イベント系施策等の販促施策のROIを横並びで可視化できました。また、お客様でも気づけていなかったROIの高いイベント施策、ポイント施策の特徴を明らかにすることができ、今後の販促企画に向けた非常に有益な示唆を得られた、という声をいただいています。
更に、この結果を踏まえた改善版の販促施策リストを作成し、実際の販促リスト実施時と比べた際の、売上増・販促費用削減効果を算出したところ、販促費用を20~30%削減しても、販促による売上純増効果を10~20%高められることがわかりました。
こちらは1施設における効果のため、運営する複数施設に対してこうした知見を展開していくことで、より大きな財務的インパクトが見込めると考えられます。
なお、BIツールで分析を実施されているお客様においては、ワンショットでこうした分析をする形だけではなく、Pythonスクリプトによる拡張機能(TabPy等)により、上述したような可視化をある程度自動化することも可能となっています。

まとめ
今回は、SC業界における、販促施策の適切な評価・選定を行うことの重要性や経営インパクトについてご紹介をさせていただきました。
リアル店舗を持つ小売業における一例ではありますが、消費財等の他分野においても適用できる考え方であると考えております。
販促施策の企画・効果測定等に課題感をお持ちの方は、こうしたアプローチを一案としてご検討してみてはいかがでしょうか。
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