はじめに
昨今の企業DXの流れを受けて、多くのお客様が内製化の取り組みを進めています。
しかしながら、お客様が内製化の取り組みを進めるにあたって様々な課題に直面しているようで、我々デジタルテクノロジーディレクター®にも多くのご相談が寄せられています。
本記事では、特にたくさんの相談が寄せられる、以下のような “内製化のあるある課題” とその解決策について紹介していきます。
- 現場の開発生産性がなかなか上がらない!
- 以前より開発の品質が下がってしまった!
- 内製化の取り組みに、現場からの賛同が得られない!
この記事がみなさまの組織において、取り組みを進めていくためのヒントとなれば幸いです。
内製化のあるある課題と対応の事例
あるある課題1:現場の開発生産性が上がらない!
開発コストを下げるために内製化をはじめたのに、プロジェクトの開発生産性が上がらず、結局お金と時間がかかってしまっている、という事例がよくあります。
「プログラミング研修も行って、CI/CDや自動化ツールも整備したのにどうして?」という相談です。
この場合、様々な内製化施策を一足飛びに進めてしまっていることが、多くの事例における原因として挙げられます。
いきなりメリットが見えやすい各論(プログラミング、CI/CDなど)から取り組んでしまっていて、全体のプロセスが整理されていないというパターンです。
解決策として、まず全体の開発プロセスを内製可能な形に整備するところから始めることをおすすめします。
とある企業様の事例では、下記のようなロードマップを策定し、最初に開発プロセスの標準化を実施しました。
この段階的なアプローチにより、現場の生産性が向上しただけでなく、内製化の成功に向けた明確な道筋もつくることができました。

あるある課題2:以前より開発の品質が下がってしまった!
次に紹介する課題は、品質の低下です。
「ベンダーさんに頼んでいたときのほうが、コストは高いけど品質は良かった!どうやったら内製で品質をあげることができるのか?」という相談。
この場合、よくある原因として「セキュリティ設計や性能設計など、難易度が高い、かつ自分たちにケーパビリティがあまりない領域の開発まで全てを自分たちでやろうとし過ぎている」ことが挙げられます。
システム開発における企画検討~開発~運用まで全てをお手製で行う必要はないのです。
このようなときは、取り組む範囲を絞りましょう。
とあるプロジェクトでは、 “機能面” と “非機能面” で役割分担を行いました。
業務に対する理解が深く、自分たちが主体的に意思を持っていて価値を発揮しやすい、いわゆる “機能面” は自社で開発を担い、システムのセキュリティやサービスレベルなどの品質担保に直結する、いわゆる “非機能面” はプロフェッショナルに任せるという形です。
これにより、品質の低下を防ぎつつ、内製化のメリットを最大限に活用することが可能となりました。

このほかにも、企画構想~要件・プロセス定義までを内製化する「業務の内製化」を行い、設計~実装を内製化する「技術の内製化」は行わない、といった取り組み範囲の絞り方も考えられます。
「業務の内製化」「技術の内製化」の考え方についてもっと知りたい方は、別記事「内製化を改めて考える|デジタルテクノロジーディレクター®」をご覧ください。

このように、何を重視するべきかを明確にし、それに応じた優先的な取り組み範囲を決めることが重要です。
あるある課題3:現場から賛同が得られない
内製化を進める中で、現場からの賛同が得られないという課題もよくあります。
ベンダーに開発を依頼する際には契約が発生しますので、責任の所在と実行の役割が明確です。
しかしながら、内製の場合は全て社内で進みますので、責任回避のために意思決定があいまいになったり、「自分には関係ない」と非協力的な姿勢をとる人たちがでてきたりします。

そのような状況に陥ってしまう原因として、「社内に一気に変化をもたらそうとしすぎている」ことが考えられます。
現場メンバーが新しい試みに対して戸惑っていて、無用なリスクを回避するためにこのような状況となってしまうのです。
新しい試みに対する社内の反発や無関心をいかに変えていけるかがポイントになりますが、多くの事例では下記のような地道な解決策をとりました。
① 草の根の啓蒙を通して、マインド醸成を行う
地道にワークショップや勉強会を開催し、現場メンバーのDXマインド醸成や体系的な技術知識の習得に取り組みました。
② 小さな成功体験を積み重ねる
システム開発の小さなプロジェクトから始めて、成功体験を積み重ねてもらいました。
この積み重ねによって、各メンバーが内製化のメリットを体感し、内製化の価値を理解してもらえました。
これらの取り組みについてもっと知りたい方は、別記事「内製化のすすめ|デジタルテクノロジーディレクター®」や、下記のYouTube動画をご覧ください。
▼ デジタルテクノロジーディレクターによるマインド変革WSのご紹介
さいごに
多くの企業様は、コスト削減や業務の効率化、ビジネスの機動性の向上など狙いとして、内製化に取り組まれています。
しかし、そういった高いレベルでの内製化を達成するためには、社内の環境整備や人材の育成など、多くの準備が必要となります。
そして、実際に取り組みを進めてみると、人員不足や組織の壁、はたまた社内政治の壁など、思ってもみない様々な課題に直面します。
それにより、取り組みが停滞し、前に進まなくなるケースも少なくありません。
内製化の取り組みは決して一朝一夕に達成できるほど容易ではなく、適切な戦略と組織に浸透させる時間が必要なのです。
また、内製化は全て自分たちでやらなければいけない、と考える必要はありません。
効果的な領域から自社のスキルセットを育て、部分的な内製化を図ることでも、本質的な目的であるコスト削減や業務の効率化、ビジネスの機動性の向上は十分達成できます。
結果を急いでやみくもにたくさんの施策を実施することは、結果として時間やコストを無駄にしてしまうことも。「急がば回れ」のことわざ通り、一歩ずつ、着実に進めていきましょう。