需要が高まるデータベース移行
現在、多くの日本企業がDXに取り組んでいますが、その成果として、新しいビジネスやサービスの創出まで至っている例はまだ少ないといえます。その原因は、予算や人員を含めたリソース不足にあると考えます。
一方で、最近のテクノロジーのトレンドとしては、クラウドベンダが提供するフルマネージドなデータベースサービスを利用することでアジリティ、及び運用性を確保・向上させているお客様もいらっしゃいます。
そういったリソース不足の解消や、アジリティ、 及び運用性の向上を図ることを目的に、クラウドリフトのタイミングでデータベースの移行もあわせて行うことを検討されているお客様からの相談が増えてきています。
データベース移行の専門組織として、これまでのご支援の中で見えてきたお客様の課題としては、データベース移行の実現性を適切に評価できないことが挙げられます。
データベース移行を実行する前に、移行性の評価を慎重かつ適切に行うことが重要です。
本稿では、データベース移行を評価する際の重要なポイントについてお伝えします。
移行の実現性を評価する上で重要なポイント
移行の実現性を評価する上で5つの重要なポイントを以下に紹介します。
1.アプリケーションの互換性
スキーマなどのオブジェクトやSQLなどのアプリケーションのコードレベルでの互換性の確認が必要です。具体的には、非互換箇所を洗い出し、修正を含めた対応に必要な工数の概算を算出します。この対応が不十分な場合は、開発途中で大きな手戻りを招いてしまうため、しっかりと実施する必要があります。
2.非機能要求を実現する機能の互換性
可用性、性能・拡張性、セキュリティなどの非機能要求を満たすために既存のデータベースが実装している機能の棚卸しを行い、移行可否を評価します。たとえば、現行で高可用性を実現している機能(共有ストレージ構成か?データベースレプリケーション構成か?など)を確認し、移行先でも同様の構成が取れるかどうか確認します。現行データベースの固有機能を利用しているような場合は、代替策の有無も含めて確認します。
また、OSSのデータベースが移行先候補の場合は、コミュニティが開発している拡張機能の実装を検討します。その際は実装する拡張機能の導入実績やサポート可否についても確認が必要です。この非機能系の評価では、正しい情報を網羅的に取得し、代替策を含めた移行性について評価することが重要です。
3.サポート体制・期間
意外と見落とされがちなポイントですが、24時間365日対応や現地駆けつけの要否、言語などのサポート体制について確認が必要です。この評価を怠ると、本番稼働した後に障害が発生した場合、求められる目標障害復旧時間を満たせなくなる可能性があるので注意が必要です。
また、製品バージョンによってサポート期間が異なるため、基盤更改やバージョンアップのスケジュールにも影響しますのでサポート期間も確実に押さえておくべきポイントの1つです。
4.データ移行の実現性
データ移行の際にどのくらいの時間、データベースを停止することができるのかを確認します。停止可能時間を把握した後はその時間内にデータ移行を完了できるツールを検討します。この検討が十分ではない場合は、実際のデータ移行に長時間かかり、時間内にデータ移行が完了できない可能性があります。また、実績のないツールを利用する場合や、検討の段階で実現の見込みが立たない場合は実機での検証も必要です。
5.技術者の確保
データベースを移行する際、移行先データベースの設計を行える技術者が当然のことながら必要になります。それだけでなく、移行後にメンテナンスや障害発生時の対応が行える技術者の確保もしくは育成が行えるかについても評価が必要です。
まとめ
企業のDXを加速させるためには、予算や人員を含めたリソース不足の解消、アジリティや運用性の向上に取り組む必要があります。
その第一歩として、本稿で紹介したデータベースの移行も視野に入れたITモダナイゼーションに力を入れるべきです。