はじめに
前回のコラムではエッジコンピューティングの基本、データの地産地消とユースケースについて述べました。
今回は連載の第 2 回として、エッジコンピューティングが普及するにあたって、解決すべき運用上の課題にフォーカスしようと思います。
これまで、様々なクラウド基盤の構築・運用に携わってきましたが、多くのお客様が基盤の運用を楽にしたいという強い要望を持っています。
こうした案件では、クラウド基盤にオーケストレータや IaC(Infrastructure as Code)を導入する、中央集権型のモデルで運用作業を自動化するアプローチを取り、お客様から高く評価していただいています。
しかし、このような従来の運用自動化の仕組みだけでは、エッジコンピューティングに適した運用は難しいと考えています。
以降では、エッジコンピューティングにおける基盤の運用課題、その解決方法について記載していきます。
エッジにおける運用課題
前回のコラムで解説したように、エッジコンピューティングでは既存のクラウドに加えて、エッジサーバを分散配置するアーキテクチャになります。
このため、単純に分散したエッジも含めてクラウド側で集中管理することで、従来と同じく運用を容易にできると考えますが、実際には以下のような問題があります。
まず、エッジの監視作業や構成変更のオペレーションがより煩雑になるという点です。
エッジサーバのロケーションや構成には様々なパターンがあると予想されます。
既存のクラウド環境のように集中管理や作業の自動化の仕組みがあったとしても、各パターンのエッジを個々に監視し運用作業を実施するコストは高くなりますし、作業上のミスが増えるリスクも存在します。
続いて、ネットワークの障害などでエッジへの通信ができなくなるケースへの対応です。
エッジコンピューティングでは一部の処理をエッジ側が担うため、エッジがクラウド側と通信できず管理できていない状態でも継続動作することが期待されます。
こうした想定は既存の集中管理の仕組みの中にないため、エッジコンピューティングに適した新たなコンセプトが必要になります。
エッジの自律的な運用
ここまでに提起した課題から、エッジコンピューティングでは各エッジが自律して管理する次世代の運用方法が求められると考えています。
単純にデプロイするだけでは問題になりませんが、変更管理と障害への備えという観点では、既存の集中管理の仕組みではうまくいかない部分があります。
これに対して、以下の 2 つのアプローチを組み合わせることでエッジコンピューティングに最適な運用管理の仕組みを提案できると考えています。
1 つ目が、エッジの状態を定義するテンプレートエンジンとコントローラの導入です。
従来の自動化のアプローチでは、監視と運用作業の仕組みがそれぞれ独立して存在していました。
これに対して、提案する仕組みでは、エッジの状態をテンプレートファイルとして定義し、システムを監視し制御を行うコントローラをエッジ側に配置します。
このコントローラはテンプレートファイルと監視した状態を比較して、差分があればテンプレートファイルの状態に修正します。
こうしたコントローラとエッジのみで完結するクローズドループの仕組みを実現することで、一歩進んだ自律的な運用作業が可能になります。

2 つ目は各エッジのコントローラを統合管理するオーケストレータのアーキテクチャになります。
ここでは、従来の中央集権的な運用管理から優れた部分を取り入れ、運用を効率化します。
ユーザはオーケストレータ上にテンプレートを作成し、オーケストレータは各エッジのコントローラにテンプレートを配信し管理する役割を持ちます。
このテンプレートの管理では、CI/CD のアプローチを取り入れることでロールバックや差分管理も容易になります。
エッジに配置されたコントローラは、送られてきたテンプレートを参照してエッジのシステムの状態を維持します。
常にローカルのテンプレートを参照するため、ネットワーク障害などでオーケストレータと切断されても自律的に稼働し続けることができます。

まとめと今後
本記事では、前回のコラムを踏まえたうえで、エッジコンピューティングに適した次世代の運用の形について、以下のトピックを解説しました。
- – エッジコンピューティングの普及について
- – エッジにおける運用課題
- – 自律的なエッジの管理
最後のトピックではエッジコンピューティングの運用課題に対して、自律的なアプローチのアーキテクチャを提案しています。
エッジコンピューティングは今後より普及していくためには、従来の仕組みから一歩踏みこんだ新たな運用な仕組みが求められると思います。
次回の連載では、エッジコンピューティングのより高度化した形と、弊社を含めた NTT 全体のかかわり方について解説したいと思います。
NTT とエッジコンピューティングのかかわり方では、特に力を入れている分野から以下のトピックを中心に考えています。
- – オールフォトニクス・ネットワークによるさらなる高度化
- – Edge as a Service による普及
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