DesignOpsとは

最近、大企業の中に「デザインチームができました」という記事を見て、嬉しくなることが多くなってきました。まだまだ日本では、主流ではないですが、CDO(Chief Design Officer)がデジタル庁をはじめ設置され、欧米に組織的にも少しずつデザインが浸透してきているように思います。そんな中、今日は「Design Ops デザインオプス」というデザインの運用を企業内でどうやって作っていくか、その際の内製化に必要なものはどんなことになるのかというお話をしたいと思います。
Design Opsは、よく以下と言われています。

出典:Nielsen Norman Group
(DesignOps refers to the orchestration and optimization of people, processes, and craft in order to amplify design’s value and impact at scale.)

https://www.nngroup.com/articles/design-operations-101/

DesignOpsとは、スケールしたときのデザインの価値と影響を増大させるために、人材とプロセス、プロダクトを組織化して、最適化することである

こう見ると、サービスやプロダクトの企画設計段階ではなく、運用段階においてデザインの価値と影響を最大化させるべく、企業内にデザイン機能を内製化し、人材、プロセス、制作を組織化、最適化していくことですが、これは単にデザインのアクティビティを運用段階で実施することではありません。

デザインアクティビティを実施することと、デザインの組織を内製化することには大きな差があります。

  1. デザイナーの採用・育成・配置
    運用に必要なデザインスキルやこれから必要になりそうなスキルの定義、採用に向けてのJob Description (職務記述書) の整理やデザイナーの育成プランやデザイナーの配置の検討などがこれに当てはまります。
  2. ワークフローとプロセスの標準化
    デザインの運用は様々なステークホルダーを介しながら日々の運用を回していますが、その中でワークフロー化して効率化するべきポイントを整理したり、プロセスの標準化を進めて、誰もがある程度の品質を提供できるようにするなどの工夫が必要になってきます。
  3. デザイナーの管理と評価
    デザイナーは他の職種と同じように評価されづらい部分を持つ職種になります。特に今までサービス、プロダクトを提供していなかった企業が新しくサービスなどを始めた際には、その評価に苦しむことは多いでしょう。しっかりデザイナーがモチベーションを上げて働ける方向性を示しつつ、それを評価するプロセスを明確に提供します。
  4. デザイナーの働く環境の設定
    デザイナーは特に働く環境にこだわりを感じる人が多いかもしれません。Macじゃないとダメや、メールではなく、チャットツール、出社した時のデスクの広さ、人との距離、色んな部分でこだわりがあり、デザイナーフレンドリーな環境を準備することでベストのパーフォーマンスを発揮できるようにします。

実際の導入プロセス

実際に「Design Opsを導入しよう」と思っても、すぐに1〜10のプロセスを踏めば導入できるというものではなく、その企業や事業体によって導入の仕方は千差万別です。なぜならDesignOpsの形自体が、千差万別だからです。そのためまず実施するのが、「アセスメントセッション」と呼ばれるものです。

「アセスメントセッション」では、既存のデザイン業務の内容や、他の組織との関わり、会社からの期待値とデザイン組織としての向かっていくべき方向性を整理していきます。これを整理していくことで、前述した4つの観点のどこの部分を重点的にまず実施していかなといけないかが見えてきます。前述の4つの観点から実施必要な要素を抽出していき、可視化し、短期と長期のゴール設定を行います。

アセスメントセッション後は、実施が必要な要素と短期、長期ゴールをベースにタイムスケジュールを検討し、伴走しながら導入支援をしていきます。

四半期ごとにミニアセスメントセッションを開き、ゴール達成度や次に優先度を上げていくべきアイテムの整理を実施、デザインが運用として回り続けていく仕組みを改善していきます。

もたらすインパクト

こうすることで、型にハマったやり方を模倣するようなDesignOpsではなく、その企業、事業体で求められる形を定義し、その運用に入り込みながら適した形をインストールしていくことが可能になります。そのため、企業、事業体の他のステークホルダーがデザインの会議やアウトプットを定点的に確認、評価されることが組み込まれていくので、この営み自体が全社的に当たり前になっていきます。

DesignOpsの導入は単なるデザイン機能の内製化によるデザイン運用の最適組織化というだけにとどまらず、全社的なデザインドリブン・顧客志向ドリブンな経営に向かっていく第一歩になるかもしれません。