モッタイナイ運用をしていませんか?
攻めの運用、DX推進など言葉としては一般的になっていますが、実際には運用作業の効率化や自動化にとどまっているケースをよく見かけます。例えば「システム監視」ではトラブルを早期検知し可用性を向上させたり、未然にリソース枯渇を防ぐといった「守りの運用」で使われることが多いですが、実はシステム監視が扱うデータには事業価値を生み出す宝が詰まっています。運用で扱うデータを価値に変える「攻めの運用DX」をしてみませんか?
今回は事例として「海外で決済事業を行っている企業」に対して、価値あるシステム監視を提案・構築した取り組みを「グローバル展開のコツ」も含めて説明したいと思います。
海外におけるシステム監視の実態
私はこれまでAPACを中心に数か国の企業・省庁に対してシステム監視を含めたインフラ開発をしてきました。その中で特に感じたのが「直接利益を生み出さないシステム監視は軽視されがち」という事です。日本企業のグローバル展開において日本品質の担保や統制を行う上で、海外子会社でシステム監視を行う事は非常に重要になりますが、事業規模を拡げている段階の企業においては目先の利益が優先され、システム監視の様な「守りの運用」への投資にはどうしても消極的になるのが実情です。
私の経験上、特に発展途上国においては「システム監視」というのは日本ほど浸透しているものではなく、NW監視など一部のみ監視するにとどまっていることが多く、トラブルが起こってからアクションを取ればよいという考え方が多い印象です。
価値を生み出す監視とは?
事例の海外決済企業(本社は日本)では当初、サービスを急拡大している時期でサービス開発に集中投資をしており、システム監視としては簡単なNW監視や全体の決済ステータスを確認できる程度で、インフラやアプリケーションのトラブルは決済システムを利用している企業による問い合わせで気づくというお粗末な物でした。
そういった状況でシステム監視導入という投資判断を引き出すため、事業予測、事業戦略において必要不可欠な付加価値が得られるという点を強くアプローチしました。
具体的には、アプリケーションログに含まれる雑多な情報を上手く活用することで、事業予測や営業をかけるポイントを幹部に対して見える化することができ、システム監視導入に対する投資判断を得ることができました。
システム監視データに含まれる宝
事例の決済システムのログデータがどう価値を生み出すか見ていきましょう。まず、システム監視が扱うデータの種類には大きく以下の様なものがあります。

一般的なシステム監視では上記①もしくは②までの監視が多く、③は監視してたとしてもアプリケーションのトラブルを検知するためにエラーログを検知する程度にとどまっていることが多いのではないでしょうか。
実はこの中で最も価値があるのは③の動的業務データ、つまりアプリケーションログだと考えています。動的業務データの中でも「中間処理」を分析、活用することで様々な価値を生み出せます。
クレジットカード決済の場合、最終的にはイシュアと呼ばれる銀行などのカード発行元に決済リクエストを送り、決済成否の応答を受けます。中間処理まで細分化した時系列情報を分析すると、例えば以下の様な価値を得られます。
- ユーザ特性の分析による売上向上
カード番号、有効期限、CVVなどエンドユーザに決済に必要な情報を入力してもらう画面でどれだけ時間がかかっているか、何度も失敗を繰り返していないか、または最終的にその画面でブラウザを閉じていないかといったといった情報を得ることができます。その情報を元にUX/UIの改善を行う事で離脱率を下げ、最終的な売上向上に直結します。 - 決済応答の分析による取引量改善
ひとえにクレジットカード決済といってもイシュア、銀行によって決済の承認基準はまちまちです。例えばある銀行では香港発行カードに対しては決済の成功率は高くても、マレーシア発行カードでは決済成功率が低いという事がよくあります。その為、決済要求に対するイシュアの決済拒否といったエラー応答を分析し、顧客の特性に合わせたイシュアを提案することで顧客の売上、ひいては決済システムの取引量向上にも繋がります。 -
お宝データを拾い上げる方法は?
こういった価値あるデータをどうやって拾い上げて分析すればよいのでしょうか。一番理想的なのは、業務アプリケーションやデータベースのスキーマの設計時に分析に使う情報を見切っておき、必要な情報を全てデータベースに格納しておく事です。そうしておけば、将来的に分析・加工・見える化など好きに行う事が出来ます。
ただ、本事例もそうですが、こういった分析を行いたいと考えた時には既にシステムの骨格は出来上がっているでしょう。その場合は、今あるデータを後付けで加工、抽出するためのツールを導入することをおすすめします。以下にツールの例を記載します。それぞれ、出来る事には大差がないのでコストやノウハウ有無で決めればよいでしょう。

おわりに
これまで保守的な分野であった運用においてもDX加速の流れは止まることはないでしょう。システムに一切手を加えず、今あるデータを活用する事で新しい価値を生み出す「攻めの運用DX」を始めてみませんか。
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