はじめに

システム更改や機能追加などのタイミングでの技術提案で困っていませんか?

新しい製品やサービスの導入を提案したいと考えながらも、従来の開発に対する慣れや技術者の不足など、さまざまな事情で従来どおりの開発から脱却できずに思い切った提案が難しいと感じている方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、未経験の技術に一歩踏み出すチャレンジを後押しすることを目的に、新しい技術の知識・スキルを素早く習得した事例をご紹介いたします。

素早い技術習得の必要性

クラウド事業者等のベンダより次々と新しい製品やサービスがリリースされている昨今、顧客にとって有益な提案のためには幅広くアンテナを張り、技術的な知見を普段から増やし続けることがますます重要になってきています。

逆に、従来路線に固執してしまい、世の中の技術動向を取り入れない提案では、顧客に響くような提案とならない場合もあり失注等の事態に発展しかねません。

実際、筆者が携わった当社の海外グループ会社の案件でも、新しい技術に対する顧客のニーズに応えられず、顧客から依頼があっても対応できないので、提案機会を逸失している状態でした。

図1: 提案機会の逸失
図1: 提案機会の逸失

この問題を克服すべく、海外グループ会社の開発チームがSaaS型DWHを利用した開発を出来るようになるための第一歩として、SaaS型DWHの設計・構築のケーパビリティ獲得を目的に案件化して取り組んでいくことになりました。

以降では、いかに素早くSaaS型DWHの技術的な知見を習得したか、この案件での解決事例をご紹介したいと思います。

経験値にあわせた段階的な理解がポイント

まず新しい分野の経験にあたっては、職務経験に照らして経験値の豊富な職務領域からスタートして段階的に理解を深めていくとスムーズに技術習得しやすいと考え、本案件での実行プロセスを検討しました。

開発メンバは以下のような経験がありDBの環境構築に強みを持っていたので、まずは環境構築を優先し従来型DBとの違いを実機で体験し、通常の基盤開発とは逆の流れ(環境構築→設計→要件定義)で進めることにしました。

  • 従来型のDBやBIを利用したデータ活用基盤の開発経験がある
  • DBの環境構築を数多く経験している

最終目標として顧客からの要件をもとにエンタープライズ向けの設計・環境構築ができることを見据えて、環境構築の疑似体験でSaaS型DWHの概要を理解し、設計要素の知識を習得し、要件と設計要素のマッピングに関する知識を習得する、といった具合に段階的に理解を深めていくアプローチを採りました。

図2:設計・構築の習熟の流れ
図2:設計・構築の習熟の流れ

①簡単なシナリオを立てて環境構築を体験する

構築作業の全体像を把握し環境構築ができるようになることを目的として、実顧客のデータ活用を意識した簡単なシナリオを立てて環境構築を疑似体験しました。源泉システムからSaaS型DWHへのデータロード等、具体的なシナリオを題材として、ベンダ提供のチュートリアル等を参考に環境構築の手順を学習し、実際に手を動かしながら環境構築を体験しました。

図3:環境構築の疑似体験
図3:環境構築の疑似体験

②設計要素を知る

実案件を意識したエンタープライズ向けの設計が出来るようにするため、SaaS型DBの設計要素を調査しました。SaaSのサービスでは、面倒な運用作業を肩代わりしてくれる反面、設計の自由度が限定されるので、実際の開発にあたっては設計可能な箇所(設計要素)と設計できない箇所(仕様)を理解する必要があります。そのため、過去プロジェクトの基本設計書を参考に、設計要素の見極めを行いました。

③要件と設計要素のマッピングを知る

実案件を意識して要件から設計への落とし込みが出来るようにするため、顧客の要求事項(要件)と設計要素の対応付けの調査として、過去プロジェクトの非機能要求グレードを参考に、要件と設計要素のマッピングを行いました。

図4:要件と設計要素のマッピング例

本案件では上記①~③の流れで取り組み、設計・構築のケーパビリティ獲得という目的を達成できましたが、経験値にあわせた段階的な理解が本取組のサクセスポイントだったと考えています。

4. 新しい技術領域に向けて一歩踏み出そう

今回はSaaS型DWHを題材として、新しい技術の設計・構築ケーパビリティを素早く習得した事例を紹介いたしました。

今後も目新しい技術が次々と登場していくと予想され、技術を生かした課題解決提案につなげていくには、普段からの目利きと実務に近い経験値をいかに素早く習得できるかにかかっていると考えています。

本記事が、従来路線から脱却して新しい技術領域に一歩踏み出すチャレンジのきっかけとなれば幸いです。