はじめに

「新規サービスを企画して成功した経験はありますか?」
この質問に対して、あなたならどう答えますか。

自信を持って「Yes」と回答できる方は少ないのではないでしょうか。

というのも、新規ビジネスは最初に社内で7つアイデアを検討し始めたとして、事業化に進む数は1つといった割合です。さらに事業化したとしても、その25〜45%は失敗すると言われています。

つまり、新規ビジネスの企画に取り組んだとして、本当に成功する確率はとても少ないです。
では、成功する確率を高めるため新規ビジネス案の質を上げるにはどうしたらいいのでしょうか。

新規ビジネス創出活動の弊害

メンバに新規ビジネス創出活動のやり方を身につけさせるためにサービスデザインの進め方やデザイン思考のマインドの研修を受講させたり、まずはそういった機会を提供するためにビジネスコンテストを行う組織や企業は増えています。
しかし、それだけでは本来目指すべきゴールである「事業化し、市場で成功する」にたどり着くことは難しいです。

新規ビジネス創出活動はいくつかの要素から成り立っています。
その中で今回は新規ビジネス創出をするにあたっての「ビジネス創出管理(マネジメント)活動」という要素に着目して、その視点で新規サービス案の質を高めるにはどうすべきかお話します。

私が新規サービス企画に取り組む方とお話した際に、多くの方が課題として感じていたことの1つに
「新規アイデアを考えたのに上層部から今までと変わらない評価をされてしまう」
という点がありました。

具体的な事例として2点あります。

  • 新しいビジネスアイデアを上層部へ説明したら、「前例がないため判断できない」
    と判断することを放棄された。
  • 革新的なビジネスの創出を求められているにも関わらず、上層部からの評価は既存ビジネスを拡張するときと同様の観点や、リスクを1度に全て排除するような視点で見られる。
    そのため、上層部を納得させるには、個々人の裏技やテクニックが肝となっている。

これらの事例は、新規ビジネス創出活動を行っているにも関わらず、それを評価する人の判断基準やプロセスは新規ビジネス用に整備されていないために起こる課題です。

新規ビジネス創出活動は「ポーカー」に似ていると言われることがあります。
ポーカーにはプロのプレーヤーがおり、長い時間続けてるといつもプロが勝ちます。
それらは彼らが単にラッキーなのではなく、明確な判断基準を持っているから勝つことができます。
判断基準とは「いつ高い賭け金を賭け、いつ賭けから降りるべきか」という基準です。

不確実性が高く大きな賭け金が必要となる新規ビジネス創出活動においても、ポーカーと同様に明確な判断基準を用意することが重要です。

メンバの教育や活動だけでなく、組織や企業としてその新規ビジネス案を

  • どういう基準で判断するか
  • どういうプロセスで判断するか

も合わせて整備しなければいけません。

NTTデータの新規ビジネス創出活動を支援・管理するためのフレームワーク

新規ビジネス創出活動の判断基準、判断プロセスを用意するため、NTTデータではステージゲート法を参考に新規ビジネス創出活動を継続的に支援・管理するためのフレームワークを整備しました。

NTTデータで用意しているフレームワークの特徴は下記の通りです。

アイデアの多産多死の実現モデル​
  • 「多産多死」による新規ビジネス開発を前提としたプロセス/評価方法​
活動フェーズ毎に用意された評価基準​​
  • 評価の初期段階では抽象的な評価内容となり、活動が進むにつれて、より具体的な評価がされアイデアが徐々に絞り込まれる
  • 評価者が参加者を厳しく批判するのではなく、参加者を育て上げるような意識を醸成
段階的な投資の実現​
  • 初期段階の活動に対しては、アイデアの不確実性が高いため大きな投資は行わず、評価が進むにつれて投資額を増やすことで、リスクマネジメントを行う

NTTデータでは、新規ビジネス創出活動に取り組み始めた組織や企業に対して、その組織/企業のミッションや課題に合わせて判断プロセスや判断基準の設計を行うご支援をしております。

終わりに

メンバに新規ビジネス創出活動のやり方を身につけさせたり、ビジネスコンテストを行い新規ビジネス創出活動へ取り組むきっかけを作ることは重要です。しかし、それらは良い意味でも悪い意味でも新規ビジネス創出活動を”やってる感”が出ます。重要なのはそれで満足するのではなく、それら活動と併せて新規ビジネス創出管理活動にも取り組むことです。メンバに任せきりにするのではなく、メンバが行う新規ビジネス創出活動を管理することが新規ビジネスを育て上げ、市場に出て成功させるための1つの重要なポイントとなります。

今回は、新規ビジネス創出活動に取り組み始めた組織のはじめの一歩として判断基準やプロセス整備の必要性をお話ししましたが、次の機会では”継続”して新規ビジネス創出活動を行えるようなイノベーション組織の作り方として、どのような組織環境やルール、人材育成が必要になるかについてお話しできたらと思います。

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