はじめに
AIの導入に取り組み始めている企業は多いと思いますが、その全てが成功しているかというとそうでもありません。
寧ろ、失敗のケースの方が多いかもしれません。
なぜ失敗してしまうのか?成功するにはどうすれば良いのか?と悩まれている企業が多々あるのではないかと思います。
データや分析環境、そして、AI技術に関する有識者が揃っていれば上手くいくかというとそうでもありません。
今回は技術的な内容ではなく、AI導入において想定される社内での検討について、経営層の方々が知っておくべき重要な成功ポイントについて挙げたいと思います。
成功ポイント
AI導入を成功に導くにはいくつかのポイントがあると思いますが、ここでは、あまり意識されていないポイントを3点挙げたいと思います。
- システム部門も現行業務を理解し、関係者間で業務への適応イメージを擦り合わせる
- ステークホルダーには、この活動に価値があることを理解してもらう
- 費用対効果を最大化する閾値を模索する

この3点について解説していきたいと思います。
1.システム部門も現行業務を理解し、関係者間で業務への適応イメージを擦り合わせる
AI導入をプロジェクトとして進めていくには、データサイエンティストや分析環境を管理しているシステム部門だけでなく、課題を抱えている業務の有識者である業務部門と連携して進めていく必要があります。
ただ連携すれば良いと聞くと、各々がその組織の役割(例えば、データサイエンティストはデータを取得して、精度の良いAIモデルを作る)を認識し、必要な情報については適宜やり取りする(例えば、打ち合わせやQA表でのやり取り)のをイメージされるかと思います。
しかし、それだと例えば、データサイエンティストが精度の良いモデルを作ったのに業務に適応できないという事態になってしまうことがあります。
この場合は、業務にどのようにAIモデルを組み込むことができるかをイメージできていなかったことが原因になります。
もうお分かりだと思いますが、業務部門だけでなくAI導入のプロジェクトに関わるシステム部門も現行業務を理解し、新しいAIモデルを導入した時にどのような業務フローになるのかを共通の認識として持っておく必要があります。
他部署の人が業務を理解するのは時間がかかるかもしれません。
早くデータ加工してAIモデルの精度を見たいという気持ちが先行してしまうこともあると思います。
そこは、グッと早まる気持ちを押さえて、現行業務を理解することに注力してください。
特に業務が複雑であればあるほど、重要になってきます。
初めは時間がかかるかもしれませんが、業務部門の方と共通言語で会話ができるようになるため、その後がスムーズに行くと考えています。
2.ステークホルダーには、この活動に価値があることを理解してもらう
1.のところでも話に出ましたが、AI導入のプロジェクトに関わる部署は複数に跨ります。
企業によって変わってくると思いますが、大きくは、業務部門やシステム部門、そして全体の予算管理の部門とも関わります。
この中で特に業務部門の現場担当者と予算管理部門の予算承認者に対しては、相手の役割を理解した上で、コミュニケーションを取っていく必要があると考えています。
まず、業務部門の現場担当者についてです。
有名な話になりつつありますが、AIで良いモデルを作っても現場の反対にあい、導入が難航するという話があります。
これはプロジェクトに現場担当者が含まれてない場合に良く起こると思いますが、いざAIを導入しようという話をいきなり現場担当者に持っていくと、彼らは長年やってきた担当業務を否定されたような感覚に陥り、反発します。
そうならないためにも、プロジェクトの初期から現場担当者にもアプローチし、1.で挙げた現行業務を理解する姿勢を示しながら、 新しいAIのモデルを導入することによる価値を根気強く伝えていく必要があります。
次に、予算管理部門の予算承認者についてです。
半期や四半期などの単位で予算の申請→承認というフローを実施している企業がほとんどだと思います。
AI導入についても同様の動きになりますが、冒頭でも記載したように成功するかどうか分からない取り組みであり、成功するにしても時間がかかるため、最初は予算を承認してもらえても途中で承認してもらえなくなるということも可能性としては考えられます。
そうならないためにも、初回のPoCで成功の可能性を示せるようにプロジェクト関係者全員が注力する。そして、価値がある活動であること、価値が出るには時間がかかることを説明し、理解を得る必要があります。
経営層の方々には、結果が出るには長期間かかるものもあるということをご理解いただき、企業にとって価値のある活動かどうかという視点で見ていただきたいと思います。また、AIの特性上、検証するまで成否が分かりません。そのため、多少の先行投資を覚悟しての判断をいただければと思います。
3.費用対効果を最大化する閾値を模索する
AIのモデルを導入しても、100%の精度を誇るモデルを作ることは不可能です。
精度が足りない部分は人や仕組みで補う必要があります。
そうなった時に何でもかんでもシステム化するとコストが高くなり、AIのモデルを導入することによる効果が薄れてしまいます。
究極は、費用対効果が薄いということで、プロジェクトが中止になる事態まで考えられます。
そうならないためにも、システム化する部分と人が業務で補う部分のバランスを探っていく必要があります。
業務部門は効果がなるべく出る落としどころを、システム部門はコストがなるべく下がる落としどころを検討し、擦り合わせていく必要があります。

さいごに
AI導入の成功ポイントとして3点挙げさせていただきました。
いかがでしたでしょうか?
既に経験されていて改善に向けて動いている方にとっては当たり前の話だったかもしれませんが、ここで伝えておきたいのは、ここで挙げたポイントは成功するか失敗するかを分ける紙一重になりえるのではないかということです。
組織間で連携しているようで向いている方向がバラバラだったというのは良くある話です。
1つの組織が他組織に働きかけることでまとまることもあると思いますが、経営層からの働きかけにより、活動のスピードが向上すると思っています。
少しでも、AI導入を実施していかれる方々の参考になればと思います。