はじめに

昨今、サービスデザインの注目度が高まるにつれ、サービスデザインを導入したプロジェクトを推進していく人財が求められています。
サービスデザインというものが十分に浸透していない現状において、顧客側はデザインに対する過度な期待を抱いたり、デザイン特有の進め方に懐疑的になることが多々あります。
一方で、デザイナー側は従来のプロダクト開発に馴染みが薄いため、不満を抱く顧客へ歩み寄ることが難しく、顧客との信頼関係を上手く構築できないケースが多々見受けられます。
このような状況において、サービスデザイン案件を成功に導くためには、顧客とデザイナー双方のバックグラウンドや思考を理解し、間を取り持ち、妥協点を探りながらプロジェクトを推進していくことができる人財が重要になってきます。
NTTデータでは、このような人財をデザインシンカーと定義しています。

サービスデザインの重要性が高まった背景

そもそも、サービスデザインが重要視され始めた背景としては、ビジネス環境と技術環境の変化が影響していると考えられます。

  • ビジネス環境の変化
    製品の性能や品質の均一化によるコモディティ化、及び消費者の価値観のシフト(モノ→コト)により、物を作って売るだけでは、他社との差別化要素を見出すことが難しくなっています。このような状況において、モノとコトを統合したサービス体験をデザインする手段として、サービスデザインが重要視され始めています。
  • 技術環境の変化
    また、AIやIoT、Cloudといった最新技術の進化に伴い、これらの技術を用いたDX変革が求められている一方で、具体的にDXとして何をすべきか明確になっていないケースが多々あります。このような状況において、テクノロジー×デザインをキーワードに、最新の技術を使いどのような課題に対し、どのようなソリューションを提供すべきかをデザインする方法論としてサービスデザインが注目を浴びています。
    今日では、DXの提案において、デザインを取り入れることは当たり前となり、いかにエンドユーザーの深い課題に対し、価値あるソリューションを訴求できるかが重要なポイントとなってきています。

デザインシンカーに必要とされるもの

このようにサービスデザインの注目が高まるにつれ、サービスデザインを取り入れた案件が増加し、案件をリードしていくデザインシンカーの必要性が高まっています。
従来のSIやプロダクト開発をリードしてきたプロジェクトマネージャーがデザインシンカーとして案件をマネジメントしていくためには、新たに知識やノウハウが必要となります。代表的なものとして、以下3つを紹介します。

  1. ① サービスデザインのプロセス理解
    サービスデザインのプロセスは、従来のSIやプロダクト開発案件とは大きく異なり、デザインシンカーはそのプロセスを十分に理解しておく必要があります。
※サービスデザインのプロセスに関する記事
https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2022/021402/
  1. ② デザイン案件特有のリスクに対する理解
    従来のSIやプロダクト開発の違いから生じる典型的なリスクについても把握しておく必要があり、いかにリスクヘッジできるかがプロジェクト成功のカギとなります。
    • お客様の過剰な期待
      お客様の中には、サービスデザインに対して過大な期待を持っている方もいます。そのようなお客様には、プロジェクト開始前や実施中に以下のことを訴求し、サービスデザインに対する正しい理解を求めていく必要があります。
      • ・サービスデザインとはそもそも何か?
      • ・どうしてサービスデザインが必要なのか?
      • ・サービスデザインを導入するとどのような効果が期待できるのか?
    • WF型(顧客)と反復型(デザイナー)の文化のギャップ
      お客様とデザイナーの思考のギャップにより、プロジェクトの進め方や方向性を決める際に衝突することが多々あります。双方の思考を理解・納得させ、間を取り持ち、落としどころを探りながらプロジェクトを前に進めていくことが求められます。
  1. ③ デザイン会社・デザイナー人財に対する理解
    デザイン会社と一言でいっても、コンサル系に強い会社から、実際にWeb制作をおこなうデザイン系に強い会社まで幅広くあることから、仕事内容と得意領域のアンマッチにより、十分なパフォーマンスを得られないことが多々あります。
    デザイン関連の作業や成果物作成を委託する際にデザイン会社を慎重に選定する目利き力が求められます。

さいごに

このように、サービスデザインを取り入れた案件を成功に導くには、従来の開発プロセスのナレッジだけでなく、デザインプロセスやハマりどころを理解し、デザイン案件特有のリスクを回避できるスキル・ノウハウを身に着けたデザインシンカーの役割が重要になってきます。
NTTデータでは、サービスデザインを重要戦略のひとつに位置付けており、サービスデザイン関連の人財育成の取り組みとして、デザインシンカーを育成するための研修プログラムを社内外に提供し、デザイン人財の底上げを図っています。(サービスデザイナを育成するための研修プログラムも現在開発中で、2023年に正式に提供を開始する予定です。)

※デザインシンカー研修に関する記事
https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2022/0520/