はじめに
近年、企業を取り巻く社会情勢として、働き方に影響する様々な変化が起きています。
従業員は育児や介護、趣味等でプライベートの比重が高くなってきており、リモートワークの需要が年々高まってきています。
そのような中、コロナ禍でリモートベースの働き方に変わったにも関わらず、オフィスワークでの働き方に回帰してしまう企業が多く見られます。
オフィスワークでの働き方に回帰すればオフィスは以前の賑わいを取り戻し、コミュニケーションが活性化したように見える一方で、働き方の自由度の低下が従業員満足度に影響して、結果的には人材の流出に繋がるかもしれません。
ところで、働き方とパフォーマンスという観点で「オフィス」と「リモート」は二律背反するものでしょうか？
私達はオフィスとリモートを手段としてとらえ、従業員満足度を上げつつパフォーマンスも上げることをゼロベースで考えることが重要だと感じています。
本稿では、働き方の変化に関する課題とその対応策について、メタバースを活用した一例をご紹介いたします。
働き方を取り巻く環境と課題
皆さんの企業では従業員の理想とする「Work Life Balance」を実現できていますか？
古くから皆さんの中で「Work Life Balance」が大事であるという共通認識はあるものの、実態としては仕事の都合に合わせた生活を行う、もしくは生活を優先して仕事を犠牲にするといった「Work or Life」の働き方になっている場合が多いのではないでしょうか。
近年、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、育児や介護の両立など働く人のニーズの多様化、感染症によるパンデミックなどの影響等を受けて、人々の働くことに対する意識は変化してきました。
リモートワークが広く普及し個人が「働く」という活動を再考するきっかけが増えたこと、個人が権利と責任を平等に持つ組織体系に変化し、働き方を決める主権が企業から個人へ移行しはじめたことを受け、個人単位だけでなく企業単位での変革を求められている状況です。
つまり、仕事か生活のどちらかを優先する「Work or Life」の時代が終わり、生活の中での仕事を可能にする「Work in Life」という働き方が求められるようになります。
昨今の働き方変革における企業課題は、投資やイノベーションによる生産性向上とともに就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることであると考えます。
特に「個人の意欲・能力を存分に発揮できる環境」をつくるためには個人が自分自身の働き方をそれぞれのライフステージに合わせた形で自ら選択することができる組織づくりが重要です。
図1.ライフステージ別働き方ニーズの仮説
社員の生活を尊重し、仕事を生活の一部として考える「Work in Life」の働き方を提供できる企業こそが質の高い人材を確保し続け、さらなる企業成長を遂げることが出来るのではないでしょうか。
しかし、近年はリモートワークからオフィスワークに回帰していく企業が増え、「Work in Life」のニーズに逆行する動きがたびたび見られます。
なぜ企業はオフィスワークに回帰しようとするのでしょうか？代表的な理由としては「非言語によるコミュニケーション」や「環境刺激によるインスピレーション」があるかと思いますが、これらは本当に出社しないと得られないのでしょうか？
いいえ、そうではありません。環境的な制約はテクノロジーで解決していきましょう。
メタバースで実現する「Work in Life」
「Work in Life」の働き方を実現する手段として、本稿ではメタバース技術を活用した方法について考えてみたいと思います。
メタバースは、仮想現実や拡張現実を活用したデジタル空間であり、人々が仮想的な世界でコミュニケーションや活動をすることができるプラットフォームです。メタバース技術を活用することで、個人の多様なニーズやライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を実現することができます。
メタバースの提供価値は様々ありますが、「Work in Life」に関連するものとしては以下が挙げられます。
１．非言語による密度の濃いコミュニケーション
リモートワークをしていると、相手の調子や表情が読み取れず、お互いの意図が正しく理解できているか分からなくなることがあります。
メタバースを用いると、アバターを通じた身振りや表情の表現をすることができます。
また、メタバース空間ならではとして、ビジュアルエフェクトを盛り込んだエモート機能も活用すれば、オフライン以上の表現ができコミュニケーションがより豊かになります。
これにより意思疎通を深め、相手の感情や意図をより正確に理解することができるようになります。
また、アバターコミュニケーションにより、現実の身体的外見や身分の束縛から解放され、個人の能力やアイデンティティが重視されるようになります。
そうすることで、皆が自由に意見やアイデアを発信することができ、社員の意欲や創造性を引き出すことができます。
図２.メタバース空間での会議（イメージ）
Mesh for Microsoft Teams が目指す、「メタバース」空間でのより楽しく、よりパーソナルなコラボレーション – News Center Japan（Microsoft.comへ移動）
２．インスピレーションを刺激するコラボレーション空間
普段のリモートワークとメタバースの最も大きな違いは、複数の人間がリアルタイムに同じ空間に存在できることです。
仮想的な空間にたくさんの人が集まって自由に移動できることで、ちょっとした会話から生まれるインスピレーションや、組織やチームとしての結束力の向上が実現できます。
例えば近くの席でよく一緒になる人を見つけたり、今日の気分で服装や髪形を変えることで周囲との雑談が生まれたり、組織のスローガンを壁に掲げて目標を常に共有することも可能です。
同じ空間にいることで、これら様々な情報が感覚的に共有され、日々新しい発見や従業員の心理的安全性の獲得につながります。
また、空間そのもののカスタマイズ性が高いのもメタバースならではのメリットです。
プロジェクト特性に合わせた環境、例えば医療関係なら病院の空間、教育関係なら学校といった空間にしてみたり、気分を変えるために景色の良い空間に変えてみたりと、業務を行う空間を簡単に切替が可能です。
これにより、物理的なコスト無しに従業員のインスピレーションを促したり、業務やコミュニケーションのパフォーマンスを高めることができます。
図3.「Coome」での会話模様
BXO Cross Reality (XR)（bizxaas.comへ移動）
メタバースによるこれらの提供価値によって、従来のオフィス勤務の時よりも自由なコラボレーションが実現でき、より個人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を選択することができます。
家庭の事情や育児の必要性に応じて、特定の時間帯や場所での作業であってもチームメンバーとの密な連携が容易になり、「Work in Life」を実現させることができます。
おわりに
本稿では、オフィスワーク回帰に対する一つの解として、メタバースを活用した働き方についてご紹介しました。
メタバースを活用することで、出社する必要性が大きく削減できるので、家庭の事情や働く場所に関わらずいつでもどこでも仕事することができます。
また、出社が不要になるだけではなく、メタバース特有の機能を活用することでオフィスワークするだけでは得られない体験やコミュニケーションができ、より生産性の向上に寄与できるでしょう。
「Work in Life」を実現する一つの手段として、メタバースを活用してみるのはいかがでしょうか。
NTTデータでは今後の働き方の変化にいち早く追随すべく、さらなる働き方の価値向上にむけた取り組みを強化していきます。
本稿が少しでも皆様の働き方を考えるきっかけになれば幸いです。
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