はじめに
新規事業創発に立ちはだかる壁
- 個人の壁
想いがあっても、事業提案にまで落とし込めない。
そもそも何を言っているかわからない。
新規事業には強い想いが必要と言われても、よくわからない。
儲かりそうにない案、どこかで聞いたような案しか出てこない。
そもそも提案がでてこない。
少し批判されるとすぐめげてやめてしまう。 - 組織の壁
事業開発に必要な資金が得られない。
人事評価にどう反映すればいいかわからない。
既存事業が重要で、新規事業に取り組む意欲が薄い。
新規事業を検討していると遊んでいると思われる。
必要な人員を柔軟に採用することができない。
リスクをとることに慎重で、提案がことごとく却下されるか、 既存事業のバリエーションに落ち着いてしまう(例えるなら「石橋を叩いて壊す」態度です)。
しかしながら調査を進めていくと、個人の壁を乗り越えることで苦労している事例が想像以上に多いことに気が付きました。
そもそも普段から新しいアイディアを出し、提案にまとめるという作業自体を行っていない人にいきなり「新規事業を提案するように」と言っても…という状況が頻発していたのです。
ではどうすればいいのでしょう?
新規事業のアイディアを考え出すことは、才能とカリスマ性に恵まれた起業家にしかできないことなのでしょうか?

個人の壁を乗り越えるために
我々は実際に新規事業を立ち上げた際、どのようにして初期のアイディアを得たかについて調査しました。
その結果、特にアイディア発想の段階で伝統的なデザイン思考とは異なるものが用いられていることがわかりました。
既存事業と異なる新たな事業の軸を見出すことがキーであり、そのための方法論を色々な企業が試行錯誤の末に見出していたのです。
そうした調査結果をTangityで新規事業向けのアイディア発想方法としてフレーム化しました。具体的には以下のようなステップを踏みます。
- 既存事業の情報収集並びに整理
対象とする事業に関して、既存事業をできる限り調査します。
その上で既存事業が競っている「軸」を定義します。
コンビニの例では「立地」「商品のラインナップ」「価格」などで競っているという結論になるかもしれません。
ここで同じ軸で競うアイディアを立案しても既存事業に商品力、ブランド力などで勝ち目はありません。 - 現場観察から新しい発想の芽を見つける
新しい発想の芽は現実世界にすでに存在しており、それを見逃さないことが重要だと考えました。
例としてコンビニエンスストアを「必要な商品をできるだけ便利かつ低価格で消費者に届ける」という概念で捉えている限り、 既存の枠内での発想しかでてきません。
しかし実際に現場に足を運びコンビニエンスストアを観察することにより、 イートインコーナーで談笑している人達の姿を見つけたとしましょう。 - 仮説思考で新たな軸を考案
次に現実を観察した結果から、既存事業が競っているのとは異なる新たな軸の仮説を構築します。
先程の例ではコンビニを実際に観察した結果から「コンビニエンスストアは商品を販売するという役割だけでなく、地域のコミュニケーションハブとしての役割もあるのではないか」という仮説をたてることができます。
その上で「コミュニケーションを楽しむ場としてのコンビニ」という新たな軸を設定し、それにそって新規ビジネスのアイディアを出していくことが考えられます。
ここで新たな軸を設定する際には発案者の「想い」を込めることが重要です。
「自分は世の中はこうあるべきと思う」という「想い」に基づいた軸を新規事業の基底に持っておくことは、 新規事業が直面する困難を乗り越える上で重要です。
現在Tangityでは上述したアイディア発想方法を用いて、新規事業創発支援を実施しています。
おわりに
企業にとって新しい事業・サービスを開発する必要性が高まっていることをひしひしと感じます。
NTTデータは、デザイン/ビジネス/テクノロジーそれぞれの観点から新しい価値を生み出し企業の新規事象・サービス開発に貢献していきたいと考えています。