はじめに

昨今、DX(Digital Transformation)への取り組みの重要性についてはどのような企業においても当たり前に認識されています。
この状況により、CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)やそれに準ずる、DX推進や新規事業創発に責任を負うリーダーの立場を新たに設けている企業も多くなっています。

そういった立場の方々は外部のスペシャリストからの提言/意見を求め、我々の様なITコンサルタントにお声がけをいただくことが多々あります。
かくいう私自身も幾人か、DX推進や新規事業創発を担うリーダーの方々と膝を突き合わせ、技術面での支援という形でお仕事をご一緒してきました。

その経験を通じ、DX推進を成功に導くリーダーの方々には、その価値観やITコンサルタントに求める立ち振る舞い方に共通項があるということを感じましたので今回ご紹介していきます。

リーダーが最も大切にしている価値観と行動原則

企業内でイノベーションを推進していくには様々な知見が必要となり、私が相対したリーダーの方々も共通的にこのようなスキルをお持ちでした。

  • 最新技術に対する興味/造詣
  • 市場への理解
  • 社内への政治力・説得力
  • 豊富なビジネスアイデア

このような多角的な素養に加え、最も大切にすべき価値観とは何なのでしょうか?

それは、顧客に提供する価値への圧倒的な拘りだと私は認識しています。

成功するリーダーの方々は「顧客がどのような課題を持っていてそれに対し自身の企業が提供できる価値がどうすれば最大化できるか?」という一点に常に向き合っています。
当たり前のことに感じるかもしれません。ただ、最初はこの点を意識しても検討が進んでいくにあたって、気づけばおざなりになってしまっていることもあるのでは無いでしょうか?
この点をおざなりにしないリーダーの方々は、以下の様な原則で行動しています。
顧客目線 顧客が求めている真のニーズを捉える為、常に顧客の行動や考えをトレースしようとしている。
未来志向 今見えている課題だけでなく、未来の動向を見据えた+αの価値を提供できるよう意識している。
スピード感 新規事業開発は誰も正解を持ち合わせていないので初めから100点の案など出ない。
その為には仮説検証のサイクルを高速で回し点数を積み上げている。
情熱の伝播 正解がわからない状況で社内外を巻き込み事業を創発していく為に、”本気でその事業が成功する”とリーダー自身が思っている、と周囲が認識するだけの熱い気持ちをみせている。

ITコンサルタントに求めるべき姿勢

ともすればスーパーマンに見えてしまうリーダーの方々ですが、勿論一人で出来ることは限界があり、周囲のフォローが不可欠です。
では、リーダーの方々をフォローする立場である我々の様な専門知識を持つITコンサルタントを有益に活用するにはどのような立ち振る舞い方を求めるべきなのでしょうか?
技術そのものだけでなく、それがもたらす”価値”への説明を求める
最新の技術/製品に関する調査や提言を求める機会が多くあるかと思います。
ともすれば技術に強みを持つ者は、技術そのものの解説に力を入れがちです。しかし重視すべきは。”その技術を使ってどのような価値を顧客に提供できるか”のはずです。
詳細な技術のスペックではなくその先にある提供価値まで踏み込んだ具体的な提言を求めましょう。
信頼できる”壁打ち相手”になることを求める
リーダーの方々にはアイデアに関する仮説を検証する為の壁打ち相手が必要になります。
しかし、偏った知見しかない相手では良質な壁打ちはできません。ITコンサルタントに対しては、業界問わず、また表層的な成功事例だけではなく裏側の生々しい失敗談まで、分け隔てなく知見を求めましょう。(第三者のITコンサルタントだからこそ知りえる色々な角度の情報を存分に引き出しましょう)
自社のバリューチェーンへの理解を求める
第一に顧客を見つつも、社内のバリューチェーンへの考慮も不可欠です。(社内の関連部署から協力を得ていく所が最も大変だったりするのではないでしょうか?)
ITコンサルタントに対しても社内のバリューチェーンへの理解を深めさせ、DX推進組織だけでなく既存のIT部門や業務部門の状況も理解しつつ最善の一手を打てるような提言を求めていくことが大切です。(例えば、技術の紹介時にIT部門が既存で有しているノウハウと親和性についても言及させる、等です。)

おわりに

非常にパワフルにDX推進や新規事業創発を成功に導いていくリーダーの方々とご一緒した経験を元に、成功するリーダー像を私なりに考え紹介してみました。

あくまで私の経験に基づく考察ではありますが、リーダーの立場の方々、それを支援する立場の方々、それぞれにとって何らかの参考になれば幸いです。