企業のIT環境を支える技術者として「現状を変えたい!もっと良くしたい!」という思いを抱えている人は多くいらっしゃると思います。

  • 早くVDIから脱却したい…。時代はゼロトラスト!自由にFAT端末が使えるようになれば生産性上がるのにな…。
  • 世の中では便利なサービスがどんどん増えている!ウチの会社でも新しいツールやSaaSを導入したい!
  • せっかく導入したサービスもガチガチなセキュリティルールのせいで全く活かせていない…。
  • …etc…

一方、上記のような熱い思いを持ち改善提案をするものの、中々意見が取り入れられず、「現場を良くするための提案しているのに、上は何もわかっていない!(怒)」と感じた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回はデジタルワークスペースの検討において技術者が主体となって改革を推進した好事例をベースに、その解決に向けたポイントを紹介させていただきます。

【ポイント】

まず最初に結論を述べさせて頂くと、改革を推進するために意思決定者から承認を得るには下記の3つのポイントの検討が必要だと考えています。

①トップダウン(Foresight起点)での整理
  • 会社や組織方針から具体的なあるべき姿(What)を定義し、バックキャストで実現手段(How)を考える
②ボトムアップでの整理
  • 具体的な実現手段(How)について、現行環境の制約や阻害要因を含め実現性や課題を検討する
  • あるべき姿(What)との紐づけを明確化し、実現手段(How)ありきになっていないかを精査する
③調整先のステークホルダー(意思決定者含む)の把握
  • 意思決定者を把握し、その立場に立って現状必要となる情報が何か(① or ②)を検討する
  • 意思決定者に承認を貰うにあたって事前に調整が必要なメンバを洗い出し、根回しをする

技術者のよくある失敗パターンとして、「導入したいサービスやツールで実現できることありき」(②のみ)で上位具申をしてしまい、中々意見が通らないパターンがよくあります。そうならないためにも意思決定者に対しては、①や③のポイントを常に念頭に置いたアプローチが必要です。

それでは、実際のデジタルワークスペースの検討事例をベースに上記のポイントを解説します。

【背景】

“VUCA”と呼ばれるような時代背景もあり、各企業はビジネスにおいてその急速な変化に耐えうる柔軟性とアジリティを求められる時代になっています。

  • Volatility:変動性
  • Uncertainty:不確実性
  • Complexity:複雑性
  • Ambiguity:曖昧性

これは企業活動を支えるワークスペース(ITインフラ)においても同様のことが言えます。
エンゲージメント向上、生産性向上、イノベーション創出…等、各企業によって目指す目標は多々ありますが、どの目標を実現するに向けても、それを下支えするデジタルワークスペースの改革も必要とされています。

【技術者主体で改革を推進した好事例】

この「デジタルワークスペース」についてですが、他の技術領域と同様にもちろん「正解」がある世界ではありません。
そのため、あるべき姿(What)の定義や実施事項(How)の具体化、そしてその実施承認に向けた調整が必要となります。
今回は技術者が中心となって推進した好事例をアウトプットイメージと共に紹介させていただきます。

①トップダウン(Foresight起点)での整理

お客様の組織方針(中期経営計画等ともマッピングしながら)からあるべき姿(What)を定義しました。
更に最先端技術・ユースケースを踏まえた上で、何を実現したいのかを各ステークホルダーと議論し具体化を行いました。

また、「今の困りごと」が「将来像でどのように変わるのか」という観点も「実現価値」の明確化に大きく寄与します。
そのために、下記のようなイメージでASIS/TOBEの整理も併せて実施しました。

このような整理を実施することで、「DX推進」や「生産性向上」等の会社の大きな方針から、「ゼロトラストの導入」等の具体的な施策(How)への繋がりを明確化することができます。

上記のようなあるべき姿(What)から実現手段(How)へのバックキャストでの繋がりこそ、案件における意思決定者(上位層)が求めている情報でした。

②ボトムアップでの整理
①を検討する一方で、具体的な実現手段(How)について現行環境の制約や阻害要因を含め実現性や課題を検討しました。
製品ベンダも交えながら技術検討を行い、下記のように実現手段(システム構成やソリューションの組合せ等)を明確化しました。
①や②の検討順序は案件特性に依る部分も大きいとは思いますが、あるべき姿(What)との紐づけを明確化し、実現手段(How)ありきになっていないかを精査することが②において非常に重要かと思います。
③調整先のステークホルダー(意思決定者含む)の把握
①と②の整理と並行して、意思決定者を含めた各ステークホルダーの把握と調整も実施しました。その際には「誰がどの観点で情報を求めているか」「意思決定者から承認を得るにあたって根回しが必要な人は誰か」という観点で各ステークホルダーへの確認を行い、最終報告時に①と②のどちらのロジックで説明を行うか、意思決定者への説明を誰と行うか…という部分を決定しました。

①と②を例え完璧に整理ができたとしても、相手に行動して貰えなければ(意思決定者に承認が貰えなければ)苦労が水の泡になります。
そのため、「相手の立場に立って知りたいであろう情報を伝える」というマインドでアプローチすることが必須になります。
「意思決定者は首を縦に振るだけでOK」というくらいに、必要な情報を揃え、説明ロジックも相手に合わせて整理することが非常に重要です。

【まとめ】

より柔軟性やアジリティが求められるVUCA時代では、技術を知っている我々現場の技術者が益々主役になるでしょう。
そんな中で、より価値を出していくためにボトムアップだけでなく、トップダウンで「あるべき姿から考える」というアプローチを身に付け、より多くのステークホルダーを巻き込み、共創していくマインドを持つことは技術者にとっても必須になってくるかと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。少しでも技術者の皆様の参考になれば幸いです。

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