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SaaSは「利用してナンボ」にもかかわらず実態は…

日本が慢性的に抱える労働人口の減少により、業界を問わず一人当たりの生産性向上が強く求められています。働き方改革と言われて久しいですが、業務改革(BPR)や反復作業の自動化(RPA)といった業務自体の見直しだけではなく、近年ではロボットやAIに一部業務を代替させ、本来向き合う業務に注力できる環境の実現が求められています。その中、「DX」を契機とした会社全体のデジタル化の動きに伴い、広く導入されている「SaaS」に今一度目を向けます。

コロナ禍によりSaaS利用企業は急増

ご存じのとおり、SaaSの特徴としては以下のものが挙げられます。

  • 素早い導入が可能
  • 必要な機能のみを安価に利用可能なライセンス体系(サブスクリプション型等)
  • さまざまな業務サービスのラインアップが提供されている
  • SaaS間の連携が可能な標準機能やAPIが提供されている
  • 定期的なバージョンアップ作業等の管理が不要

また、現状のコロナ禍によりリモートワークを余儀なくされたことも重なり、場所に依存せずインターネット環境があれば業務を遂行できるワークスタイルがSaaSの利用を加速しています。

図 SaaSを利用した場所に捉われないワークスタイル例

図 SaaSを利用した場所に捉われないワークスタイル例

SaaSは「利用してナンボ」にもにもかかわらず実態は…

先述したとおり、業務効率化を前提にSaaS導入は企業規模を問わず進んでいる一方で、導入後の不満や課題が表れているのも事実です。導入後のお客様の声をもとに取り組むべきと考える課題をご紹介します。

a. [未利用]:SaaSの機能が利用者に開放されていない

1つのSaaSにはさまざまな機能が提供されています。しかし、業務上必須ではない簡易なアプリケーション開発機能(ローコードプラットフォーム)やコマンド処理で結果を返答するインターフェース(API:Application Programming Interface)などの機能は利用者に開放されていないことが見受けられます。

たとえば以下のようなケースで業務効率化を行いたい社員がいた場合、機能が解放されていないために改善を行えないことがあります。

  • SaaSで提供されているワークフローツールを使って簡易に業務の自動化を行いたい
  • SaaSのAPIを利用したスクリプトを作成し、業務を自動化したい

このような環境では社員の自発的な業務改善は促進されず、さらには改善のモチベーション低下にもつながることが考えられます。

そのため、機能解放が進めば社員が自発的に生産性を高めていく動きを加速できると考えます。最近ですと、社内で広く利用されているMicrosoft 365に焦点を当てAPIを解放する仕組みの導入に取り組んでいる企業が出始めています。当社もそういった取り組みを始めています。ただし、単純な機能開放ではなくセキュアかつ業務影響がないよう管理する必要があるため、利用者からの要求を受け迅速に承認処理をする仕組みの導入等が必要になってくると考えます。

b. [部分最適]:SaaS適用業務範囲が一部のため、業務全体の効率化につながらない

SaaSは会議やチャット、営業管理など汎用的な業務を行うために提供されているため、それだけでは、各社の業務フロー全体を効率化することができない場合があります。

たとえば、会議を行う場合、以下のようにSaaSの導入により効率化されているところはウェブ会議の一部分であり、全体でみると人手で行う箇所が多数あります。

  1. 会議の日程をメール等で調整し、決定後に会議ID/パスワードを送付する
  2. ウェブ会議システムで会議を行う
    ※SaaS導入により移動時間や事前の資料送付作業を削減
  3. 議事録作成や当日利用した資料をメール等により送付する

このように、一連の作業をみるとSaaSにより改善している部分は一部であるためSaaS同士やSaaSと既存システム間を連携する仕組みを作ることでさらなる業務効率化を実現できると考えます。

c. [データ未活用]:SaaSに蓄積されるデータを活用しきれていない

SaaSを導入したことで利用者が操作するさまざまなデータを取得できる環境になっています。しかし、多くの企業では監査などセキュリティ対策に必要なものしか活用せず、他に蓄積される多くのデータに目を向けていない状態だと思われます。生産性向上を継続的に行っていくにはモニタリングすべき項目を検討し、蓄積される多くのデータを活用することが必要と考えます。

たとえば、以下のようにSaaSに蓄積されるコミュニケーションの情報から管理者がケアすべき人を特定できるのではないでしょうか。

  • メールやチャットのコミュニケーション頻度が低い人は、一人で問題を抱え効率的に業務を行えていない可能性がある
  • チャットツールで否定的な発言が多いグループでは進め方に問題がありテコ入れが必要な可能性がある

以上のように仮設を立て、取得すべきデータを選定して検証していくことが必要だと考えます。

こういった取り組みに着目する企業は、モニタリングすべき指標を検討することから取り組みを始めています。社員の生産性に関連する項目について、たとえば、テレワークにより変化した働き方に着目した在宅ワークの生産性指標などが挙げられます。在宅ワークでは対面でのコミュニケーションが減少するため、よりコミュニケーションツールの利用頻度が上がる傾向にあります。そのため、メールやチャットの件数から効率的に働くことができているか検証していくことが有効と考えられます。その項目をモニタリングすることで、より効果的な施策を継続的に打つことのできる仕組みにつながります。

まとめ

現在広く普及しているSaaSですが、a.[未利用]、b.[部分最適]、c.[データ未活用]に挙げる課題によりその真価をまだまだ引き出せていないと考えています。真価を引き出すためには、SaaSの機能を解放する仕組みやSaaS同士を連携させる仕組みを作ること、モニタリングする指標の検討を行うことで蓄積されるデータを活用することを行うべきです。このような取り組みより、生産性向上に寄与することにつながると考えます。

※記載されている商品名、またはサービス名は、各社の登録商標または商標です。

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山下 豊

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デジタルテクノロジーディレクター®
対応業界:金融
得意分野:Microsoft 365を活用したリモートワーク環境の実現やAzureを活用したシステム導入を得意とする。

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