2020年に広がった新型コロナウイルスの影響で私たちの働き方は大きく変化しました。
リモートワークが当たり前となり、物理的な移動やオフィスが不要となった人にとって、主に働く環境であるリモートワーク環境が従業員エンゲージメントに大きく影響する状況となっています。
これまでも、働き方の変化とともに、企業の働く環境である情報システムも変化してきました。
情報システムが利用され始めた当初、システムは社内からのみ利用することを前提として作られ、企業の閉域網の中で運用されてきました。しかし、メールの台頭に始まり、インターネットの普及、クラウドの活用など、働く環境が企業の外であるインターネットに拡大していったことで、システムはインターネットプロキシの導入など、ネットワーク整備やセキュリティ対策の拡充がなされてきました。
では、新型コロナウイルスによるリモートワークの普及によって、働く環境である情報システムはどう変化したでしょうか。

情報システムの変化

昨年の新型コロナウイルス流行直後、リモートワークの推進に伴い、従業員が社外から社内業務システムに接続するためのインフラ環境整備が急務に行われましたが、企業は投資コストを抑える必要があったため、リモートワーク環境も最低限の整備しか行われず、企業のネットワーク回線や帯域が不十分で業務にならない、リモートワーク環境とは名ばかりで接続できる拠点や条件が厳しく結局出社しないと業務にならない、といったお話を企業様から良くお聞きしました。
また、自社でのインフラ環境整備が間に合わないと判断し、働く環境を一部切り出してクラウド移行されたお客様もいらっしゃいました。
ただリモートワークの迅速な導入を優先してセキュリティ面は後追いで検討する方針とした結果、日々不安を抱えながら運用されている、というお話もお聞きしています。

働き方の変化はコミュニケーションの考え方にも影響し、企業のエンゲージメントにも関わってきました。
リモートワークでは情報格差が起きやすく、また人とのつながりが薄れる傾向があります。これらを解消するためにはオープンコミュニケーションのように、どこでも誰とでもつながることができる環境が求められますが、企業として既存のルールやセキュリティを優先せざるを得ず、コミュニケーションがきちんと取れる環境を提供できたケースはまだまだ少ないと感じています。結果として、不都合なリモートワーク環境を提供してしまうことによって、生産性の低下や従業員エンゲージメントの低下につながってしまい、悩まれているお客様もいらっしゃいます。
新型コロナウイルスの影響で情報システムのあり方は変化してきたものの、まだまだ対応不十分で問題が山積みではないかと思います。

働き方の変化に対する情報システムのあり方

今後、情報システムが変化を続ける働き方に対応していくためにはどういったことが必要でしょうか。
あるべき姿は、従業員にとって働きやすい環境であるとともに、企業が情報システムをきちんと管理できている環境であることが両立された姿であると考えています。

従業員にとって働きやすい環境とは、どこからでも情報システムにアクセスができること、職場にいるかのようにいつでもコミュニケーションが取れること、クラウドを含む便利なツールを利用して従業員が生産性を上げる権限を持つことなどが挙げられます。
企業が情報システムをきちんと管理できている環境とは、従業員が利用している情報システムをすべて把握していること、情報システムのリスクを把握し責任を持つことなどが挙げられます。

こういった働き方を実現する方法として、我々はゼロトラストネットワーク(※)を取り入れた情報システムにシフトしていくことをご提案しています。

※ゼロトラストネットワークについては以下のページをご参照ください。
コロナ禍に企業がとるべきIT戦略とニューノーマルを実現するゼロトラストの世界

図1 働き方と情報システムの関係性

ゼロトラストネットワークを取り入れた情報システムへのシフト

ゼロトラストネットワークを取り入れた情報システムとは、どういった考え方で、何を実現するのでしょうか。
3つの重要なポイントがあると考えています。

1.アジリティを重視してクラウド中心の情報システムにシフト
情報システムがどこでもいつでも不都合なく利用できるには情報システムをクラウド中心にシフトする必要があります。ゼロトラストネットワークでは、クラウドに適したセキュリティを高度な認証機能やサイバーハイジーン※1機能によって実現します。また、既存の企業LAN内にある情報システムをエッジとしてクラウドに切り出し、エンドポイントセキュリティを整備します。

2.企業情報へのアクセスをすべてモニタリングしガバナンスを徹底できる情報システムにシフト
どこからでも企業情報にアクセスされることを考慮して、企業情報に境界を引いてアクセスさせない考え方ではなく、企業情報にはアクセスされる前提で何が起きているかすべて把握して適切に対処する考え方が必要です。ゼロトラストネットワークでは、IDやデバイスを統合管理して、すべての操作や通信のログを分析できる環境を整備することで働き方のモニタリングを実現します。そして企業のポリシーをもとに、アクセス認可制御やデータマネジメントを行うことで、企業の働き方のルールを徹底させることも可能です。

3.従業員自身が機能性やユーザビリティの高い情報システムを取り入れて改善できる文化にシフト
変化に強い働き方が求められる中では、従業員自らが業務改善可能な機能やユーザビリティを持つ情報システムを施行して導入する文化が必要です。ゼロトラストネットワークでは、クラウド中心のシステムにガバナンスを徹底させることが可能となるため、企業がBYOD(Bring your own device)やシャドーIT※2を容認でき、従業員が好きなように自身の業務を改善できる環境を実現します。

上記のようなゼロトラストネットワークの考え方を取り入れる際には、さまざまな機能を実現するための多種多様な技術要素・製品を組み合わせる必要があるとともに、幅広いアーキテクチャの知識や製品知識が必要となる点も忘れてはいけません。

ゼロトラストネットワークへのシフトが企業成長に

今後も世の中の変化に応じて働き方は変化していき、企業が従業員エンゲージメントを極大化するためには、働き方に柔軟性や多様性が求められます。そのためには情報システムにゼロトラストネットワークの考え方を取り入れることは必要であり、そういった情報システムにシフトできた企業こそが将来的に大きく成長できると考えています。

※1 サイバーハイジーン:情報システムを常に最新かつ適切に把握して、情報システムの健全性を維持し、内部及び外部からの脅威から保護するよう継続的にアプローチすること
※2 シャドーIT: 従業員や業務部門の判断で利用され、情報システム管理部門などの企業側の把握や管理が及んでいない情報システム