はじめに

プロアクティブ人材とはなんでしょうか。
それは、「自発的」「主体的」「積極的」にゴールを目指して行動できる人のことだと思っています。
具体的に言うと、ゴールに向かうプロセスを定義し、お客様その他関係者と合意し、プロセスを作業に落とし込み、リスクをあらかじめ予防し、予防しきれなかった問題に対しては一人称で解決に導く、そういった行動がとれる人です。
こういった「引く手あまた」な人を雇用できる機会はなかなかなく、自分たちの組織で育成していくことが必要となります。
しかし、どうやって育成していくのでしょうか。

NTTデータでは、システム性能問題の解決や性能アーキテクチャコンサルティングなどを行う専門チーム「まかせいのう」を組織化しています。
DX時代に求められる性能人材。その育成の秘訣。」では、性能プロフェッショナル人材という、プロアクティブな発想を持って問題解決に取り組むことができる人材となるための育成ロードマップについて紹介いたしました。

その育成の最初のステップが左端にあるOFFJT「まかせいのうメソッド」です。このプログラムにおいて、受講生はプロアクティブ人材となるためのベースの考え方を学び、実践します。
本稿ではこのOFFJTの取り組みとそのポイントについてご紹介いたします。

「まかせいのうメソッド」とは

まず、「まかせいのうメソッド」とは、性能試験と問題解決の基本知識と基本動作を習得するための研修です。
実環境を用いて、性能試験の計画~準備~シナリオ作成~試験~報告までの一連の流れを一人一人実施します。バージョンアップを重ねながら10年以上実施されている研修であり、新たにまかせいのうチームのメンバとなった人はもちろん、社内外に向けても研修を実施しており、延べ数百人が受講しています。

本研修の受講生が達成すべきゴールを下記と設定しています。

<研修のゴール>
・まかせいのうの現場に出た際に、性能試験に関する用語を理解できて、人に説明もできる
・各作業が最終的な目的(性能試験を実施する目的)にどうつながっていくのかを理解できて、人に説明もできる
・試験対象システムと性能監視ツールのアーキテクチャを理解している
・負荷掛けツールの基本的な使い方(キャプチャ、試験実施、結果集計)ができる
・発生した問題に対して、対応方針を自分で考えて、人に報告することができる

一般的な研修は知識の理解にとどまることが多いかと思いますが、赤字の部分で示したように、本研修は内容を理解した上で、自分で咀嚼して人に説明できるか、主体的に動くことができるか、という点を重視しています。
まかせいのうは高難易度の案件に対応することが多いチームです。そのため困難な状況に対面することも多く、その際には単なる作業者では求められている期待値を超えることができません。その場の問題を定義し、解決のための道筋をつくり、周囲を巻き込みながら解決に向けて自ら推進していくという姿勢が大事になります。
そのための「自分の頭で考える、行動する」という基本的な動作を、受講生は本研修において徹底して学びます。

「まかせいのうメソッド」研修のポイント

「まかせいのうメソッド」が一般的な研修と違う点について、いくつか紹介いたします。

①知識をインプットすることを重視していない
同じ土俵で話をするために最低限の知識のインプットは必要ではありますが、知識を得ることがこの研修のゴールではありません。
単なる知識が必要なのであれば、チーム内で蓄積された過去のノウハウ・ナレッジを利用することで事足ります。その知識を「どう使うのか」のほうが重要であると考えています。
本研修では座学を3時間程度行った後はすべて各個人のハンズオンとなり、自分で実際に行動してみる、ということを重視しています。

②正解がない
学生に近い立場であればあるほど正解を追い求める受講生が多いですが、本研修には正解はないです。
通常の業務を疑似体験する内容となっているため、目的とそれを達成するための道筋はありますが、正解はないです。(通常の仕事も同じかと思います。)
受講生が自分で考えて、目的を達成することがゴールとなります。

③主体的な姿勢が求められる
通常の研修は講師側がスケジュールを組んでそれに沿って進んでいくことになりますが、本研修はWBS作成(作業を分解して適切な時間を割り当てる作業)から受講生が実施します。
問題が発生した際には、受講生自身が問題に気付き、必要な行動をとることが必要となります。

④手厚いサポーター
受講生に対してとにかく自分で考えろといっても、最初から簡単にそれを実践することはできません。
本研修では各受講生に対してサポーターを配置し、朝会・夕会・成果物レビュー・週次ミーティングなど、いくつかのコミュニケーションの場を通して相談しながら進めていきます。
もちろん答えを教えるわけではなく、サポーターが受講生に問いかけて考えさせる、という働きかけを行います。

⑤通常業務の疑似体験
本研修では通常の業務を疑似体験する内容となっており、つまりOJTであっても同様の体験ができます。
しかしながら、通常業務の片手間のOJTでは時間が足りず、説明はできるが理解させるところまで到達できない、時間がなく先輩社員がすべて実施してしまい、知識が一部作業に偏ってしまう、というケースが多いかと思います。
本研修では最初から最後まですべての工程を受講生が実施することによって、短期間で各タスクの作業内容から工程全体の流れまで理解した状態で、研修終了後は実際の案件に参画することができます。

ポイントとして共通的に言えることは、「こちらから教える」ではなく、「自らが行動できるように働きかけを行う」ということです。教えたことをできるようになる、ということも大切ではありますが、本研修では受講生が自分で考え、工夫する経験を積むことを大切にしています。

最後に

今回は、まかせいのうにおける性能プロフェッショナル人材育成のOFFJTの秘訣を紹介させていただきました。
昨今はシステムのつくりも開発スタイルも様々であり、必要とされる知識も様々です。
「まかせいのうメソッド」は性能試験と問題解決の基本知識と基本動作を習得するための研修ですが、知識の習得以上に「自分の頭で考える、行動する」という基本マインドをいかに徹底させるか、という点を重視しています。研修終了後もそのマインドを持って案件に参画することで、単なる作業者にとどまらない、より高度な経験を積み重ねたプロアクティブ人材となることができます。

性能プロフェッショナルとして、プロアクティブな発想を持って問題解決に取り組むことができる人材を、どう育成していくべきかということは長年の課題であり、今後もよりよい育成コンテンツとなるよう改良を続けていきます。