はじめに

今、物事を自ら明らかにしなければならない世界が訪れています。
企業にとってはサプライチェーンの透明性も求められていますし、企業活動で発生する環境負荷への対応も求められています。
ESG経営というキーワードの元、積極的に開示する企業が多くの投資を得られ、そうでない企業は企業価値が相対的に低下していくことになります。そして、これからはデジタルに物事を開示していくことが必要となります。

本記事では、この開示について、デジタルな技術は何を支えるかについて紹介します。

世界のために証明しなければならない時代へ

これまでの商行為では、企業は大量生産し世界でシェアを拡大していくことが重要とされていました。
人口が多い国で商品を売り自社のビジネスを拡大する、そのために賃金が安い国に工場を建て大量生産する、消費者に対しては商品をアピールして売ることが大切でありました。

しかし、年々この動きは変わりつつあります。特に商品の透明性が重要になりつつあります。
そして、これらについて企業や人々に求められる社会的責任は広がっています。
2022年1月時点では以下のような事柄が注目されています。

1) 原産地証明
商品で扱っている原材料が適切な場所、適切な組織にて生産されているかが世界から求められています。
例えば、国際的な犯罪組織が関与していないか、違法な飼料等を利用していないか、工場にて子どもを違法に働かせていないか、などを証明しなければなりません。
これまでは、サプライチェーン関係者にて年1回現地を訪問して状況をチェックする、またその結果を発信していたというような取り組みもありました。ですが、現在はより明確な証明が求められています。

また、トラブルがあった際には、速やかに特定して何らかの解決案を出さねばなりません。そのため、発生した時点から解決に向けて情報を収集していては遅いということになります。
そして、今後はその調査に時間をかけるほど、その企業の信用が失われることになりかねません。
最終的には、商品やブランド失墜だけでなく、グローバルレベルでの大規模訴訟、膨大な罰金を科せられるかもしれません。

(2 CO2など環境負荷情報の証明
温暖化が深刻化するのに伴い、環境に与える負荷に応じて税金等を支払う必要が出てきています。
税金はサプライチェーン全体から算出されるため、製造工程で発生した環境情報も把握しなければなりません。これらは証明することで税金が減額されるような動きになるため、企業にとって重要なテーマです。

例えばCO2排出権取引に関して、自社だけでは対応が困難なため、他社のCO2クレジットを購入することがあります。このとき他社のCO2クレジットの価値が毀損しているものを購入すると、購入した企業についても購入した経緯を説明しなければなりません。これは対外的な説明だけでなく、企業価値の点から経営にインパクトを与えることになります。真摯に対応できない場合、取引停止といったペナルティを国際社会から課せられることになるでしょう。

(3 正規品証明と消費者保護
今もなお様々な偽造品が世界中で多く出回っています。消費者は何気なく商品を購入しますが、正規店で購入していない場合、その商品が正規品であるかを証明しなければなりません。何故なら偽装品の場合、リセールバリューは限りなく小さいし、そもそも売れない可能性があります。

これまでは紙による証明書が発行されていましたが、その証明書自体が偽装されている可能性もあります。
そのため、商品の正しさをデジタルに証明していく必要があります。このデジタルな証明書によって、購入者を適切ではない商品から守ることにつながります。

ここまでで証明が注目されている事柄についてお伝えしました。
ただ、そのために何をすれば良いでしょうか。
ここでは、デジタルに解決していく手法として、NFTを活用する方法を紹介します。

NFTを活用した製品の証明

NFTとはNon-Fungible Tokenの略称で、単純に訳すと非代替性トークンと言います。
これはモノの唯一無二をデジタルに証明する権利証明書のようなものです。以降、デジタルな権利証明書として説明します。

このNFTですが、現在はデジタルコンテンツを所有できる権利の流通ということで日々話題になっています。NFTは所有権を流通させることで、クリエイターの資金獲得手段に利用されています。

では、このデジタルな権利証明書であるNFTをどのように利用するか説明します。

正規品証明とNFT
正規品証明とNFT

例えば製造者であれば、製造者固有の情報や製品固有の情報を組み合わせて、権利証明書を作成します。
さらに、環境情報などの情報も必要に応じてこの証明書に追加します。

発行した証明書は、所有者を商行為に沿って変更していきます。
例えば、商品を購入する人は、購入の際に会員登録するケースがあります。その手続きと同じように、購入する人に権利証明書を渡す。つまり、商品の所有者を購入者に変更します。

この手続きは、会員登録と同じようにアプリケーションにて行います。また、購入者もスマートフォンなどでアプリケーションを利用します。これにより購入者に製品の証明書がデジタルに受けわたります。

一方、製品を所有している情報は、ブロックチェーンネットワークに記録されます。
このブロックチェーンネットワークが誰でもアクセスできる場合、先ほどのアプリケーションを利用しなくても参照できます。
そのため、第三者によって製品が正規品かどうかを問われた際には、この証明書に関する情報を第三者に伝え、第三者がブロックチェーンネットワークで検索することで、正規品かどうか確認できます。

購入者が他の人に売却する場合も、このトークンの情報をアプリケーションを通じて売却先に引き継ぐことで、その所有情報も変更できます。ブロックチェーンネットワークでの情報も変更されます。

このような仕組みを利用することで、製品の情報をデジタルで公に証明していくことが可能になります。

終わりに

ここでは製品のデジタルな権利証明書として、NFTを利用する方法について説明しました。
NFTについては、現在は所有しているコンテンツの値上がりや暗号資産の価格に注目が集まっていますが、その仕組み自体は有用です。

今後世界中から求められる製品に関する情報を証明していく方法として、NFTやブロックチェーンネットワークは重要な要素の一つとなるでしょう。